まさか、離婚の原因はそれ?
思いがけない上に、かなりヘビーな話だ。
「そんな……。ひどい」
同じ女でも、とても理解できない。
他に好きな人がいるのに、どうして結婚なんてしたのだろう。
そうしたことはドラマや小説の世界だけだと思っていたのに、その犠牲者がこんなに身近にいるとは。
呆気に取られていると、彼は私の手をいっそう強く握る。
背筋にゾワゾワした感覚が走るのに気づき、首を傾げる。
なんだろう、これ。
男性にアプローチされたときのドキドキのようなものとはあきらかに違う。
「あの……」
「精神的に疲れてしまって。俺ももう恋愛はいいやと思ってたんだけど、篠崎さんと話をしていたら、惹かれていくのが自分でもわかって……」
「え!」
惹かれて? 私に?
「付き合ってもらえないだろうか。妻とのことで傷ついたから、俺は決して裏切ったりしない。約束する」
私はしばらく瞬きを繰り返し、自分に起こっていることを理解しようと努めた。