「十文字くん、ごめん。あなたがどうとかじゃないの。あなたのママ、働くの大好きだからくぎを刺しただけ」

「誰がママって?」


真由子に怒りの言葉をぶつけると、彼女はおかしそうにケラケラ笑う。


「大変なことは手伝うよって話。私も新人とペアを組んだことあるんだから、多少は頼りなさいよ」
「ありがと」


疲れ切った体に、彼女の優しさがしみた。



その日の午前中は、深沢さんと一緒に過ごした。

資料作りは着々と進んでいるが、他にも新人たちにどの得意先の様子を見せると効果的か営業員たちに聞いて回り選定する作業を始めている。


「この組み合わせ、いいかもしれないですね。ガイア一色の店と、うちが強い店」

「うん。でも、営業担当者が違うな。同行となると難しいか……」


私が提案すると、彼は考え込む。

仕事量は確実に増えているとはいえ、深沢さんとの仕事は苦ではない。
もともとこうしたことに知恵を絞るのが好きなのだ。