深沢さんにしてみれば、私がその仕事を請け負う分、十文字くんが得意先を回ればいいという考えだったようだが、フォローアップしなければまだ難しい。
そのため、残業したり仕事を家に持ち帰ったりして、なんとか回している状態だ。
それに加えてもののけとの遭遇。
プラス、夜の睡眠が浅くなっている。
こんな体質なのでマンションの玄関には盛り塩がしてあり、そのおかげか自宅の中までもののけが入ってきたことはなかったが、最近は部屋にいても嫌な雰囲気を感じるのだ。
入ってはこられないが、すぐ近くにいるような。
「篠崎さん、ごめんなさい」
真由子の発言を聞き、十文字くんの眉尻がまた下がってしまった。
「あぁっ、大丈夫。誰だって新人時代はあるんだから、気にしなくていいの」
と言いつつ、真由子に牽制の眼差しを送る。
十文字くんはたしかに冴えないけど、意外とデリケートな一面もあるのよ?