それから十日経過した。

ここのところもののけ遭遇率がいやに高く、カエルや男の子だけでなく、一本足だとか、顔はサルなのに手足はトラに見えるものとか、とにかくわんさか寄ってくる。

昨日の帰り道でも、同時に三体ほどのもののけらしきものに出会ってしまい、「どいて」と強気で制して走って逃げた。

ただ、体が重い感じは終始拭えず、そのせいか疲れ気味だ。


深沢さんと初めて一緒に会議室で作業をしたときほど苦しくはないが、毎日どんよりとした曇天のようなすっきりしない気分で出社していた。


「十文字くん、今日の得意先はここね。一応、店長や担当者の性格を書いておいたから」


今日も遅刻ギリギリだった彼はあれから奮闘しているものの、やはり気を張り詰めているせいでへとへとなのか覇気がまったく感じられない。


「ありがとうございます」
「ちょっと。そんな沈んだ顔じゃ、買ってもらえないよ? はい、笑顔」


彼の頬をつかんで促すと、真由子がクスッと笑っている。


「あやめも疲れた顔してるよ。お肌の張りもいまいちだし。大丈夫?」
「ほんとに? ヤバいな」


と返したものの、自分で鏡をのぞいてもそう感じている。


「仕事量が増えて、厳しいんじゃない?」
「それは……」


それもある。
深沢さんから請け負った新人教育のための資料作りは多岐にわたり、すぐにできると思っていたのに甘かった。