「おめでとう」
「ありがとうございます。それより、篠崎さんです」


彼は私の肩に触れる。
するとさらに体が軽くなった気がした。


「もうすっかり大丈夫。ちょっと疲れてたみたい。深沢さんと一緒に仕事をするのも初めてだったし、緊張してたのかも」


緊張感などまるでなかったが、深層心理というものは私にもよくわからない。


「深沢さんのサポート、断れないんですか?」


彼は真剣に訴えてくる。


「十文字くん、立派にやれてるじゃない。全部私と一緒じゃなくても大丈夫だよ」
「僕の心配はいいんです。篠崎さんです」
「ん?」


私? どういう意味?


「体調が悪くなるほどこき使われて……」


もしかして、パワハラでも受けていると勘違いしてる?


「違うよ。黙々と資料作ってただけだから」


むしろ営業に出るより楽できた。
それなのに、あの体調の悪さはなんだったのか説明できない。


「ダメです。深沢さんは絶対に」


珍しく語気を強める彼に驚く。