「うーん。でも好かれるのは悪くないよ。会話ができるようにならないといい関係は築けないでしょ? ビールの話もできないじゃない」
「そう、ですね」
こういう素直なところも彼らしい。
「あっ、潤生の追加注文をいただきました」
それを早く言ってよ。
「よかったじゃない。ひとり立ち大成功ね」
「それはちょっと……」
喜んでいるのかと思いきや、相変わらずひとり立ちは嫌なのかな。
今日は思いがけずパートさんたちに囲まれたから?
「まるはのほうは?」
どちらかというとそっちが気になる。
「エンド、いただけました。『エンドの棚、欲しいな』って――」
「まさか言ったの?」
ロールプレイングしてお手本を見せたでしょう?
「いえ、心の中で五十回くらい唱えてから店長のところに行ったんです」
まさかの自己暗示?
しかし彼なりに考えだした技なら、否定する必要もない。
「朱雀の注文も追加で入りました」
なんだ順調じゃない。心配いらなかった。