持ち上げるって……。
それなら「いつも笑顔が素敵ですね」あたりのほうがよくない?
あの店は、制服がない代わりにおそろいのグリーンのエプロンをしている。
けれども、それが似合うと言われてそんなにうれしいかな。
似合わないよりはもちろんいいけど。
でも、彼なりに考えた精いっぱいだったんだろうな。
「頑張ったじゃない。囲まれてどうしたの?」
「はい。今まであんまり話せなかったからと質問がいっぱい来て」
話せなかったというより、イメージチェンジ前の彼に興味がなかっただけだろう。
「質問って? ビールのこと?」
「違います。彼女はいるのかとか、どんなタイプが好きなのかとか。僕、タイプなんてわかりません!」
あぁ、安定の冴えない十文字くんを見ると無性に落ち着く。
「そっか。モテモテじゃん」
「モテッ? い、いいです。僕、そういうのは困るんです!」
真っ赤になってる。
この調子では彼女がいたこともないんだろうな。
かわいいかも。