コーヒー豆を出したのに、それからは手が動かずしゃがみ込んだ。


「篠崎さん。どこですか?」


そのとき、十文字くんの声がした。


昼過ぎに一旦帰ってくることにはなっているが、まだ早すぎない? 
もしかして、なにかしでかした?

立ち上がって彼のところに行きたいのに、それができず嫌な汗が噴き出す。

なにか重いものに上から押さえつけられているかのような感覚に、戸惑いを隠せない。


「ここ」


やっとのことで小さな声を吐き出すと、バタバタと足音が近づいてきて、彼が顔を出した。


「どうしたんですか?」
「ごめん。ちょっと体調が……」


深沢さんには言えなかったのに、十文字くんに言えるのが不思議。
今さら取り繕うような仲ではないからだろうけど。


「ちょっ、立てますか?」
「うん」


彼に促されて立とうとしたのに、よろけてしまい慌てる。


「あっ……」


すると倒れそうになった私の体を、十文字くんがうしろから抱きかかえるようにして支えてくれた。