突然目の前に出現されて驚きのあまり尻もちをついたこともあれば、道すがらくっつかれて「あっちに行って!」と大声で叫んだら、周囲の人から冷たい視線を浴びたこともある。
実に厄介な存在だ。
しかも、二十歳を越えたあたりから姿を現す数が増えてきて、とても困っている。
とはいえ、他の人には見えないので相談することもできない。
一瞬歩みを止めた私を、十文字くんは不思議そうな顔で見つめている。
「篠崎さん、あの男の子タイプですか?」
「は……?」
あなた、私の心の中が読めるの?
好みだけど、今はそれどころじゃないの。
「なに言ってるの? ほら、行くよ」
車はもののけがいる方向に停めてある。
私は笑顔を引きつらせながら、意を決して足を踏み出した。
高校生はすぐ近くの横断歩道を渡って離れていき、カエルだけが私を待ち構えている。
「反対がよかった……」
「なにか言いました?」
「なんでもない」