それは本音だった。

突然放り出す形になった十文字くんのことも気になるし、私が新人とペアを組んだのはまだたったふたり。

ほかの先輩たちより引き出しが多いとは思えない。


「俺は篠崎さんが気に入ったから、バトンタッチなんてさせないよ?」
「はぁ……」


なにが気に入られたのだろう。
さっぱりわからないものの、上司命令に逆らうこともできない。


「さて、なんだっけ。差別化ポイントか……。篠崎さん、ビールの種類ごとにいくつかあげられる?」

「はい、もちろんです」

「それじゃあ、俺は商品開発から必要な資料を持ってくるから、その作業お願い」


彼が立ち上がったので私はうなずき、持ってきたパソコンを立ち上げて作業を始めた。



それから十分。


「あれ……。体調が悪い?」


肩のあたりが重くて、全身に倦怠感がある。
疲れたときはこういうことも珍しくはないけれど、急速に悪化したので首を傾げた。