「肩入れというわけでは。十文字くんには十文字くんのいいところがあるように、今後入ってくる新人さんも、得意なところを伸ばしてあげられたらいいなと」


これは肩入れ、なのだろうか。

毎日一緒に行動しているとため息の嵐のくせに、他の人から十文字くんの悪口を聞くと腹が立つ。

営業トークはちっともうまくならないが、彼も精いっぱい努力しているの!と叫びたい。

母親が息子をかばう心境かしら……。


「十文字くんのいいところ、か」


意味ありげな笑みを浮かべる彼は、ボールペンを手で弄び始めた。


「俺も探してみよう」
「えっ? ……はい」


いいところなんてないと断言されると身構えていたのに、拍子抜け。


「それにしても、篠崎さんはさすがだね。人を育てる力が一番ありそうだと、課長が俺のサポート役に君を推したわけがわかったよ」

「いえ。先輩方のほうが経験もおありですし、私自身が教育していただかないといけないような立場の人間ですから、他の方とバトンタッチしていただきたいくらいです」