私、どうしてこんなに必死になっているんだろう。
深沢さんの言うように、十文字くんは営業向きじゃないと何度も思ったのに。
「そう……」
「まだ二課に来て日も浅いですから、もう少し長い目で見てあげてください。それに、彼がひとり立ちできないのは私のせいでもありますから」
もっとうまく導ければ違ったかもしれない。
って、どうしたらいいのかまるでわからないのが痛いところではある。
「篠崎さんがそんなに言うならそうしよう。それで、新人教育の件だけど、押さえたいポイントを書き出してみたから目を通してくれる?」
「わかりました」
彼から書類を受け取るとき、軽く指と指がぶつかった。
その瞬間、なぜか体が重くなったのは気のせいかな。
「新人さんはいつから二課に?」
「今は基礎研修中で、工場での研修もあるから一カ月くらいあとかな」
中途採用なので、十文字くんより年上の可能性はあるけれど、彼も二課では先輩になるのか。
先輩の自覚が出てきたら、もっとシャキッとしたりして。