十文字くんと別れたあと、一番小さい会議室に向かう。

深沢さんは先に来ていて、私が入室すると「手伝わせて悪いね」と人懐こい笑みを浮かべた。


「私で本当にお役に立てるのかわかりませんが……」
「まあ、座って」


彼に促されて、九十度の位置に座る。


「十文字くん、なかなか曲者らしいね」
「あはは。人見知りくんで」


どう聞いているのだろう。
今のところ、彼のみ研修期間が長いというわけではないけれど、このままだと確実にそうなりそうだ。


「営業なのに人見知りは困るね。なんなら課長と相談して、配置換えしてもいいけど」


そんな提案をされるとは思いもよらず、とっさに首を横に振っていた。


「待ってください。ちょっと変わったところはありますけど、すごく真面目なんです。きちんと市場調査もしていますし、私が伝えたことは完璧に覚えていて実践しようと努力しています。自信さえつけば大丈夫ですから」