串さとの件でわかったのは、しっかり得意先の把握をしているということ。
それなのにそれを生かす能力がちょっと欠けている。
自分で成功をもぎ取った経験がないので、腰が引けていると分析した。
スーパーまるはがうまくいけば、少しは顔を上げられるかも。
幸い見た目を整えたおかげで、認識してもらえるようになっているし。
「それじゃあ、頑張って。私は深沢さんのところに行ってくる。困ったら電話してくればいいから」
打ち合わせが終わったら会議室にと言われているので立ち上がると、不意に十文字くんに腕をつかまれた。
「どうした?」
「篠崎さんも困ったら電話してください」
意外すぎることを言われてキョトンとしていると、真由子が笑いをかみ殺している。
「わ、わかった」
彼に電話をしたところで解決する事項があるとは思えないが、彼なりの精いっぱいの優しさなのだとうなずいておいた。