「レシピのサンプルはこれ。用意してきちゃいましたって、エンドの棚欲しいなアピールをするのよ? 多分OKが出るから」


ここまで準備していってダメだとは言わない得意先だ。


「私が店長だと思って、ちょっとやってみて」

「は、はい。棚の案もレシピも用意してきちゃいました。エンドの棚、欲しいな」


え……。そのまま話せとは言ってない!


「あははは。夫婦漫才してるの?」


真由子がとうとう声をあげて笑いだした。


「はー」


大きなため息をつくと、十文字くんは途端に眉尻を下げて不安そうだ。


「わかった。ちょっとやってみるから聞いてて。こんにちはエクラです。先日ご提案したエンドの件でうかがいました。実は棚の配置に――」


彼には事細かく教えたほうが効果的だと、ロールプレイングをしたあと、考えられる質問の答えまで用意した。

ここまでやれば行けるでしょ? 

十文字くんに足りないのは多分自信だ。