もののけに遭遇したときの対処の仕方なんて誰も教えてくれないのに、どうしたらいいの?


「なんで見えるのよ」


なにかひとつ取り柄が欲しいと思うことはあれど、もののけが見える能力は断固としてほしくなかった。

私は自分の運命を呪いながらザバッと湯船から出た。



翌週の月曜も、十文字くんは遅刻ギリギリ。

始業時間まであと三分となったところで電話を入れたら、廊下から着信音が聞こえてきてホッとした。
今日はスマホを忘れなかったらしい。


「おはようございます」
「おはよ。ね、クマすごくない?」


せっかくイケメンに変身したのに、顔色が悪くどよーんとした空気が漂っている。


「眠れなかったんです。篠崎さんと別れるなんて」


彼がそう訴えた瞬間、真由子がぷっと噴き出している。


「ついに別れ話をしたの?」
「付き合ってないから!」


わかっているくせしてからかう真由子に反論しつつ、十文字くんのネクタイを直す。