「怖いです。篠崎さんと一緒じゃないと無理です」
いやいやいや。
お母さんもさすがにデートには同伴しないのよ?
「頑張りなさい。私が育てたんだから、胸張って」
「はい……」
そんなにへこまれると私が不安だ。
「今日は本当にありがとう。気をつけて帰ってね」
「はい、それでは」
彼は丁寧にお辞儀をして元来た道を戻っていった。
「本当に近いのかな……」
気を使っただけで、逆方向だったりして。
とはいえ、こうして家まで送ってもらっても、襲われる心配がまったくない男性というのも貴重だ。
部屋に帰ったあと、バスタブにお湯をためて浸かる。その間も頭に浮かぶのは十文字くんのことばかり。
なんだかんだ言っても、長く時間を共にする十文字くんは話しやすいし、彼もなついてくれている。
「心地いいのかな」
ちぐはぐな会話にも慣れてきたし。
「それより」
私は自分の手をじっと見た。
あのカエルにもう会いたくない。
でも、また来るような気がしてならない。