他の男性に言われても目が飛び出たりはしないけど、十文字くんは別。
そういうことをさらりと口にするキャラじゃないもの。

とはいえ、またあのカエルが出てきたら……。と不安な私には渡りに船だった。
ひとりだと怖いのだ。


「いいの?」
「もちろんです」


髪を切ったせいか、微笑まれると心臓がドクッと跳ねる。
いくら、相手が十文字くんだとわかっていても。


それから私たちは肩を並べて歩き始めた。


「十文字くん。仕事不安よね」
「……篠崎さんと離れるのが不安です」


それ、親離れできない子供みたいじゃない。


「話しやすい得意先を選ぶから心配しないで。米山さんのところとかなら大丈夫だと思うよ。もちろん、なにかあれば私もフォローする」


深沢さんの手伝いもずっとというわけではないだろう。
私もフォローアップに回るし、新規開拓はしばらくお預けでもいいかな。


「ありがとうございます。僕、篠崎さんがいないと本当に困るんです」