しかしそのとき、一瞬にして嫌な空気が漂ったかと思ったら、背中がいきなり重くなる。

なに? うわっ、カエル。

先日から何度も姿を現すカエルが、私の背中にのっていた。


「ヤダ……」


体をゆすぶって振り落とそうとするもびくともせず、ペロリと長い舌を出すだけで不気味だとしか言いようがない。

またこの舌が首に巻きついたら……と全身に鳥肌が立ち、どうにかしなければと思った私はとっさに走りだした。

集団の中ではなにもできないからだ。


走りつつ手で払っても消える気配がない。
少し前までは、一喝したり払ったりすればいなくなったのにどうして?


「消えて!」


人通りのない路地裏でたまらなくなり命令したが、カエルは背中にのったまましがみついている。

しかも、舌を私の顔のほうに向けて伸ばしてきたので、首に巻き付けられるわけにはいかないと必死の思いでそれを握ってブンと投げた。

はぁはぁと荒くなった息を整えながら道路に転がったカエルに視線を送る。