「……はい」
十文字くんは困り顔で返事をした。
それから私たちは元の席に戻った。
野坂さんは酔いつぶれて寝ているので助かった。
「大丈夫だよ。頑張ろう」
「はい」
さっきから『はい』しか言わない十文字くんが心配だけど、業務命令なので従うしかない。
それから彼は、ウーロン茶片手になにか考え込んでしまい、ひと言も発しなくなった。
三十分ほどして歓迎会が終わり、店の外に出た。酔っ払った人たちはそれぞれタクシーに乗せられて帰っていく。
「あやめ、二次会行く?」
「ううん、やめとく」
真由子に誘われたものの断った。
沈んでいる十文字くんが気になってはしゃげない。
「そっか。気をつけて帰って」
「ありがと」
彼女は二次会に顔を出すらしく、深沢さんたちの集団に戻っていく。
私がそちらに視線を向けると、深沢さんと視線が絡まったので小さく頭を下げた。
「ん……」