「そうでしたか。弊社にもブラックコーヒーの取り扱いがありますので、ご検討いただけるとうれしいです」


そこでまた絶妙のタイミングで十文字くんからパンフレットを渡される。


「こちらなんですが、苦みは控えめの商品でして、高校生の男の子にも飲みやすいかと」
「あら、いいかもしれないわね」
「今度、サンプルをお持ちしますね」


私たちはパンフレットを手渡して、店を出た。

ごり押しもよくない。
引くときは引かなければ。

この塩梅が難しくて時々失敗してしまう。


店を出たところで、制服を着崩した背の高い美男子が、気だるそうにこちらに歩いてくる。

遅刻かしら。

シャツの第一ボタンを外し、ネクタイを緩めている彼は髪がほんのりブラウンで間違いなく染めている。
教科書入ってるの?と突っ込みたくなる薄いカバンを肩にひっかけて歩く様子にドキッとする。