深沢さんは、今のところどんな人なのかまだよくわからない。
ただ、最初に丁寧なあいさつをして回っている姿を見たからか、わりと好印象だ。
真由子の話では、課長に的確な意見をぶつけていたらしく、仕事もできる人らしい。
「なんでバツイチなのかな……」
「ん?」
「なんでもない」
心の声が口に出てしまい、十文字くんに拾われた。
容姿もなかなかだし、仕事もできて着実に昇進している深沢さんが離婚するなんて。
人生、なにが正解かわからない。
ま、夫婦のことは他人がとやかく言うことではないけれど。
開始時間となり、幹事の先輩が部長にあいさつを促した。
しかしこれが長くて、皆ほとんど聞いていない。
肝心の深沢さんの紹介に入るまでに、五分以上経過していた。
深沢さんは長い話にうんざりしている課員を気遣ったのか、ごく簡単に「これからよろしくお願いします」とだけ言ったあとは乾杯。
各々が話しだす。