「ひとりじゃ無理だって。一緒に行こうよ」
「十文字くんみたいなこと言ってる……」
頼られるのは嫌じゃないけど、私だってたまには甘える側に回りたいのにな。
「篠崎さん、隣いいですか?」
甘えた声ですがってくるのは十文字くんだ。
「うん、どうぞ」
こんなときまで口うるさい教育係のそばにいなくてもいいのにとも思うが、彼なりに理由があるのだ。
あまり意見を主張しない彼は飲めないのに飲まされてしまうことが多く、酔っぱらいのターゲットになると大変なことになる。
真面目なのか不器用なのか適当にあしらうこともできないようで、いつも私がさりげなくブロックしている。
「ほら、GO。他の人に先越されるよ?」
急かすと、彼女は私を連れていくことをあきらめて、深沢さんのほうに向かった。
「岸田さん、よかったですか?」
十文字くんが心配げに話しかけてくる。