イメージチェンジした十文字くんは、得意先から大反響があった。
行く先々で注目を浴び、見られることが苦手な彼は「疲れた」を連発しているものの、そのうち慣れると思う。
認識すらしてもらえなかった彼がかまってもらえるのは、個人的には嫌だとしても営業としては悪いことじゃない。
そんな中、深沢さんの歓迎会が行われることになった。
会場は会社近くの先輩が担当している居酒屋だ。
もちろん飲み物はすべてエクラの商品が出てくる。
「あやめ、深沢さんと仲良くなるチャンスよ?」
深沢さんがバツイチで今は彼女なしという情報を仕入れてきた真由子が大張り切りしているが、私はそれほど前のめりになれない。
散々ひどい振られ方をしてきたせいか、恋愛したいと思えなくなっているのだ。
一度デートをしただけで連絡がつかなくなるなんて、私ってどれだけ嫌な女なんだろうと自分に呆れている。
それに、また同じようなことがあって傷つくのが正直怖い。