この辺りのガイアビールの担当者は、四十代後半の男性のはず。
顔を見たことがある程度でどんな人なのかまでは知らない。
「わ、私も頑張りますので、どど……うぞエクラもよろしくお願いします」
十文字くんから意外な言葉が出て、びっくりだった。
こういうときは黙っていることが多いのに。
ただ、緊張のせいかちょっとばかり噛んでいたのは見逃そう。
「あはは。十文字くん、頑張って」
どうしても滑らかな会話にはならない十文字くんのことを、米山さんが励ましてくれた。
その後は店頭に向かい、いつものように商品の陳列チェック。
潤生だけでなくネクスト黒がかなり減っていて、テンションが上がる。
「売れてるね」
「はい」
十文字くんもうれしそうだ。
「あれっ、エクラさん? 担当交代?」
そこにパートさんふたりが寄ってきた。
彼女たちは私に尋ねながら、視線は十文字くんに向いている。
「いえっ、私はただの見習いで! 担当するなんてまだ早いですから……」