そこは、心の中で喜んでいるだけじゃダメなの。
言葉にしないと!
「ありがとうございます。米山さんのおかげです」
私は慌てて十文字くんの代わりにお礼を述べた。
彼は言おうと決めてきたことは口から出てくるけれど、とっさの反応に弱い。
アドリブが利かないのだ。
「ただね、最近ガイアさんからの圧力もすごくて、拡売かかってるんだよね」
やはりそうか。
他店でも耳にしたが、何ケース売ったらインセンティブを支払いますというキャンペーンをしているようだ。
エクラでも時々行うが、会社の規模が違うので、回数もインセンティブの金額も敵わない。
「そうですよね。いつも無理を言ってすみません」
「ガイアの営業も来るんだけど、実はいまいち気に入らないんだよね。うちの商品がないと困るだろ?みたいな横柄さを感じちゃって」
米山さんがそんなふうに思っていることは初めて知った。