ということで、今日は十文字くんに話をさせる予定だ。
それなのにいつまでも会話に加わってこないうしろの彼にチラッと視線を送って促した。


「い、いつも弊社の商品を置いていただきありがとうございます。こちらの店舗で先月、前年同期百二十パーセントを達成しました」


そういえばそうだったような。
毎月出される得意先ごとのデータを見て調子がいいとは思ったが、そこまで細かいチェックをしていなかった。

なにもしてないようで、ちゃんとしているんだな。

串さとの件といい、私よりずっとしっかり調べてある十文字くんに驚きを隠せない。

あとは営業センスか……。
私たちにはそれが一番重要だけど。


「そう。エクラさんの潤生、個人的に好きなんだよ。それでお客さんにお薦めを聞かれると推してるんだ」


それはうれしい。

すぐさま反応すべきなのに、十文字くんは満面の笑みは浮かべているもののなにも言わない。