モニカが目を覚ますと、まだ外は夜が明けたばかりの白い空であった。
サイドテーブルの上にある時計を確認すると、いつもより早い時間であった。
「マキウス様……?」
モニカが身体を起こすが、マキウスはどこにもいなかった。
やはり、夢を見ていたのだろうか。
けれども、ベッド脇がとても温かかった。
まるで、先程まで誰かが居たかのように。
「もしかして……!」
モニカはベッドから降りると、部屋履きを履いた。
椅子の背に掛けていたガウンを羽織ると、部屋を出たのだった。
「マキウス様、起きていますか……?」
マキウスが使っている寝室までやって来ると、控えめに声を掛けながら扉を開けた。
まだ日が昇ったばかりの、やや薄暗い室内には誰も居なかった。
その代わりに、ダブルベッドの上が人の形に膨らんでいたのだった。
「なんだ……。やっぱり夢だったんだ」
足音を忍ばせて、ベッドにそっと近づくと、そこには扉に背を向けてマキウスが眠っていたのだった。
「そうだよね。夢でもなければ、マキウス様があんな彼氏みたいなことをして、あんな優しい笑顔を向ける訳がないよね」
モニカはホッと安心すると小声で呟く。
そのまま静かに立ち去ろうとした時だった。
「随分と、聞き捨てならないことを言うんですね」
マキウスに背を向けて、扉に向かっていたモニカだったが、その言葉に足を止めると、後ろを振り返った。
「マキウス様?」
モニカの呼び掛けに答えるように、マキウスはベッドの上で身体を起こしたのだった。
「マキウス様! すみません、起こしてしまいましたか?」
「いいえ。先程、ベッドに戻ったところでした」
マキウスはモニカより一足先に目覚めると、モニカが夜間に使ってしまった魔力を魔法石に補充してくれたらしい。
その後、睡魔に勝てそうになかったので、一度寝室に戻って、使用人が起こしに来るまで、一眠りしようと思っていたところに、モニカが来たらしい。
「そうだったんですね。知らなくてすみません」
「それよりも、先程の貴女の言葉。いつもの私らしくなかったというのは、どういうことですか?」
「そ、それは……。夢の中のマキウス様は、とても優しくて、たくさん笑いかけてくれて、まるで彼氏とデートをしている様に、楽しかったので……。あ、別に今のマキウス様を否定しているつもりはないんです!
私が見たのは夢であって、今のマキウス様に不満なんて全然なくて……」
慌てて取り繕うと、マキウスは、はあっと大きくため息をついたのだった。
「夢の中でも言いましたが、あれは夢ではありません。私は貴女の夢の中に入ったんです。
貴女と一緒に貴女の世界を歩いたのも、貴女と一緒にパンケーキを食べたのも、貴女にネックレスを贈ったのも全て本当です」
「それじゃあ、夢の中での言葉や表情は……」
「全て本当です。貴女への想いに偽りはありません。
それより、普段の私はそんなに固い表情をしていますか?」
「そこまで固くは……。でも、ニコラに向ける笑顔よりは、どこか固い気がします。
引き締めた顔をしているといいますか……」
「……これからは、柔らかい表情をするように努力します。
可憐な金の花に照れないように、もっと微笑みましょう」
「可憐な金の花ですか? それは一体……」
マキウスが手を伸ばしてきたので、モニカがぎゅっと目を瞑って身を縮める。
頬を愛撫されたのだった。
「貴女のことです。モニカ」
恐る恐る目を開けたモニカは、夢の中で見たのと同じ、穏やかな表情を浮かべたマキウスに魅了されたのだった。
サイドテーブルの上にある時計を確認すると、いつもより早い時間であった。
「マキウス様……?」
モニカが身体を起こすが、マキウスはどこにもいなかった。
やはり、夢を見ていたのだろうか。
けれども、ベッド脇がとても温かかった。
まるで、先程まで誰かが居たかのように。
「もしかして……!」
モニカはベッドから降りると、部屋履きを履いた。
椅子の背に掛けていたガウンを羽織ると、部屋を出たのだった。
「マキウス様、起きていますか……?」
マキウスが使っている寝室までやって来ると、控えめに声を掛けながら扉を開けた。
まだ日が昇ったばかりの、やや薄暗い室内には誰も居なかった。
その代わりに、ダブルベッドの上が人の形に膨らんでいたのだった。
「なんだ……。やっぱり夢だったんだ」
足音を忍ばせて、ベッドにそっと近づくと、そこには扉に背を向けてマキウスが眠っていたのだった。
「そうだよね。夢でもなければ、マキウス様があんな彼氏みたいなことをして、あんな優しい笑顔を向ける訳がないよね」
モニカはホッと安心すると小声で呟く。
そのまま静かに立ち去ろうとした時だった。
「随分と、聞き捨てならないことを言うんですね」
マキウスに背を向けて、扉に向かっていたモニカだったが、その言葉に足を止めると、後ろを振り返った。
「マキウス様?」
モニカの呼び掛けに答えるように、マキウスはベッドの上で身体を起こしたのだった。
「マキウス様! すみません、起こしてしまいましたか?」
「いいえ。先程、ベッドに戻ったところでした」
マキウスはモニカより一足先に目覚めると、モニカが夜間に使ってしまった魔力を魔法石に補充してくれたらしい。
その後、睡魔に勝てそうになかったので、一度寝室に戻って、使用人が起こしに来るまで、一眠りしようと思っていたところに、モニカが来たらしい。
「そうだったんですね。知らなくてすみません」
「それよりも、先程の貴女の言葉。いつもの私らしくなかったというのは、どういうことですか?」
「そ、それは……。夢の中のマキウス様は、とても優しくて、たくさん笑いかけてくれて、まるで彼氏とデートをしている様に、楽しかったので……。あ、別に今のマキウス様を否定しているつもりはないんです!
私が見たのは夢であって、今のマキウス様に不満なんて全然なくて……」
慌てて取り繕うと、マキウスは、はあっと大きくため息をついたのだった。
「夢の中でも言いましたが、あれは夢ではありません。私は貴女の夢の中に入ったんです。
貴女と一緒に貴女の世界を歩いたのも、貴女と一緒にパンケーキを食べたのも、貴女にネックレスを贈ったのも全て本当です」
「それじゃあ、夢の中での言葉や表情は……」
「全て本当です。貴女への想いに偽りはありません。
それより、普段の私はそんなに固い表情をしていますか?」
「そこまで固くは……。でも、ニコラに向ける笑顔よりは、どこか固い気がします。
引き締めた顔をしているといいますか……」
「……これからは、柔らかい表情をするように努力します。
可憐な金の花に照れないように、もっと微笑みましょう」
「可憐な金の花ですか? それは一体……」
マキウスが手を伸ばしてきたので、モニカがぎゅっと目を瞑って身を縮める。
頬を愛撫されたのだった。
「貴女のことです。モニカ」
恐る恐る目を開けたモニカは、夢の中で見たのと同じ、穏やかな表情を浮かべたマキウスに魅了されたのだった。