「それとは別に、指輪を贈ろうと思っていたんです。その……恥ずかしい話、二個目の魔法石の指輪を買った時に、結婚指輪の費用がほぼなくなってしまったので、まだ考えている途中でしたが……」

 どうやら、「今の」モニカ用の魔法石の指輪を用意する際に、結婚指輪の費用を使ってしまったらしい。
 恥ずかしそうに、マキウスが話してくれたのだった。

「それでも店から購入するには費用が足りず、姉上から格安で譲ってもらうことになりました。姉上の母上ーー先のブーゲンビリア侯爵夫人は、魔法石の収集が趣味だったそうで、亡くなった今も形見として、屋敷にたくさんあるそうで……」
「それで、お姉様が魔法石の指輪を持って来てくれたんですね」

 どうして魔法石を届けに来たのが、ヴィオーラだったのか、モニカは気になっていたが、今のマキウスの話でようやく納得したのだった。

「お金は必要ないと姉上は言いましたが、それでは弱みをにぎら……私の気が済まないので、分割で支払うことにしました。再来月には支払いを終える予定です」
「借金もして用意してくれたんですね。すみません。魔法石が欲しいって我が儘を言って……」

 そんな事情とは知らず、マキウスに無理をさせてしまった。
 申し訳ない気持ちで胸がいっぱいになっていると、マキウスは首を振ったのだった。

「貴女が気にすることはありません。私も貴女に渡した方がいいと思ったので、姉上から譲ってもらったのです。
 それに、魔法石が無ければ、こうして貴女の世界を知ることは出来なかった」

 この夢は魔法石に宿ったマキウスの魔力を使って見ていると聞いていた。
 魔法石がなければ、元の世界を想起させる夢を見ず、マキウスとパンケーキを食べることもなかっただろう。
 マキウスの言葉に、モニカも頷いたのだった。

「でも、それならいいです。無理して用意をしなくても」
「いいえ。妻に恥ずかしい思いはさせられません。
 貴女にそのような思いをさせたと姉上に知られたら、私が姉上に叱られます」

 ヴィオーラに怒られることを想像したのか、マキウスは青い顔をしたのだった。

「じゃあ、指輪はまた別の機会に考えましょう。今は個人的にアクセサリーを見たいです」

 モニカたちがパワーストーンのアクセサリーを眺めていると、茶髪の若い女性店員が近づいてきたのだった。

「何かお探しですか?」
「いいえ。探しているというわけでは無いんですが……」

 モニカが答えに窮していると、店員は何かを察したのか「ああ!」と声を上げたのだった。

「恋人さんにプレゼントですか?」
「いいえ。恋人ではなく夫婦です」

 店員は即座に訂正したマキウスの端正な顔立ちに気づくと、一瞬だけ目を輝かせた。
 それでも、さすが店員と言えばいいのか、すぐに表情を切り替えると、「失礼しました」と軽く頭を下げたのだった。

「それでは、ご夫婦に人気のこちらのアクセサリーはいかがですか?」

 店員が勧めてきたのは、新緑の様な小さな緑色の宝石が嵌まった二組の指輪であった。