物珍しそうにアーケードを見渡し、時折「あれはなんですか?」と質問するマキウスと、その疑問に答えるように説明していたモニカだったが、とあるお店の前まで来ると、モニカは立ち止まったのだった。

「マキウス様、ここは私の行き着けのアクセサリー屋なんです」

 モニカが立ち止まったのは、アーケードの中程にある十字路の角のお店であった。
 アクセサリー屋らしく、入り口にはネックレスやブレスレット、指輪が飾らせていた。
 入り口から四段ほどの階段を降りると、一階はパワーストーンのアクセサリーコーナー、二階は宝石のコーナーとなっていたのだった。

 二人が店内に入ると、他に客はいないようだった。
 モニカはマキウスを連れて、迷わず一階のパワーストーンのコーナーに向かったのだった。

「これは、宝石ですか?」

 マキウスは掌よりも二回り小さな透明の石を手に取ると、店内の照明に透かせながら呟いた。

「宝石ですが、ただの宝石とは違うと思いますよ。パワーストーンなので」
「パワーストーン?」
「宝石の中でも特別な力を持っているものをパワーストーンというらしいです。
 癒しの力や恋を叶える力を持った石、仕事や運気が良くなる石が有名ですね」

 モニカは答えながら、棚に陳列されたパワーストーンに視線を移した。
 木の香りが漂う木製の店内、明るすぎない照明の下には、桜の様な桃色やレモンの様な黄色の他に、赤色、水色、白色、紫色、黒色など、様々な色のパワーストーンが並べられていた。
 その中央には、パワーストーンのピアスやイヤリング、ネックレスが売られていたのだった。

「どれも素敵ですよね。欲しくなります。
 このネックレスなんて、マキウス様の瞳と同じ色ですね」

 モニカが薄紫色の小指の爪より小さなアメシストがはまったネックレスを眺めていると、「そういえば」とマキウスは思い出したようだった。

「そういえば、モニカにはまだ結婚指輪を渡していませんでしたね」
「結婚指輪って……。魔法石の指輪のことでは無いんですか? その前にも、高そうな赤い宝石の指輪を貰っていますし……」

 正体がバレるきっかけとなった赤い宝石の指輪は、今はモニカの部屋の鏡台の引き出しの中に大切に仕舞われていた。
 貰った直後は首から下げていたが、ニコラに触れる時に魔法石の指輪を首からかけるようになった時、落としてしまいそうになったので、外出時などに身につけるだけにしたのだった。

「あれはイミテーションの宝石です。庶民でも買えるような安価な指輪です」
「それなら、この魔法石の指輪は? これは結婚指輪ではないんですか?」

 モニカが左手の薬指にはめていた魔法石の指輪を眺めていると、マキウスは首を振ったのだった。