「いつか、マキウス様が育った地方の男爵家にも行ってみたいです」
「地方だけあって、自然に囲まれただけの何も無い場所ですよ?」
「それがいいんです! ここも、今の屋敷も、自然が少ないですから。たまには緑豊かな自然の力を感じて、癒されたいです!」
マキウスは目を見開いたが、すぐに笑みに変えた。
「では、落ち着いたら、ニコラも連れて一緒に行きましょう。母上の墓前に報告もしたいですし、祖父の代から世話になっている屋敷の者たちにも、自慢の妻と娘を会わせたいです」
「はい! その時を楽しみにしていますね!」
モニカはテーブル脇にあった白い布の埃除けを捲ると、中からは草で編まれた籠が出てきた。
籠の中からよく磨かれたナイフとフォークを取り出すと、マキウスに渡したのだった。
「さあ、冷めない内に食べましょう!」
このお店のパンケーキは、リコッタチーズが売りのフワフワ生地の二段パンケーキだった。
パンケーキの上には、たっぷりの生クリームと、いちごやベリーなどのフルーツが皿から溢れんばかりに乗せられて、彩りを豊かにしていた。
仕上げに、たっぷりの蜂蜜とベリーソースがパンケーキ全体にかけられており、食欲を唆る甘い香りが周囲を満たしていたのだった。
「うん。前と変わらず美味しいです……って、これも、以前私が食べた味を再現しているんでしたね」
モニカはパンケーキを切り分けると、生クリームやベリーソース、蜂蜜をつけて、上にフルーツを乗せて食べていた。
最後にこのお店のパンケーキを食べたのは、御國が階段から転落する数か月程前の春先だった。
あの時は春先だったこともあり、注目した季節のパンケーキは、イチゴとベリー、生クリームがたっぷり乗った春限定のパンケーキだった。
学生時代の友人と一緒にパンケーキを食べながら、お互いのことや周囲のことなどたくさん話した。
その時に、友人が仕事先で知り合った人と恋人関係になったと聞かされて、モニカは祝福したものだった。
友人は恋人と上手くやっているだろうか。
もう会うことは叶わないが、幸せになって欲しいと願っている。
しんみりした気持ちになって、ふとマキウスを見ると、まだ一口も食べておらず、ナイフとフォークを持ったまま固まっていたのだった。
「あれ? 食べないんですか?
マキウス様は甘いものがお好きだと思っていましたが……?」
その言葉に、一瞬、マキウスは驚いた顔をすると、やがて困ったように形の良い眉を顰めたのだった。
「モニカ……。この食べ物は何ですか?」
「何って、パンケーキですが……?」
「もしかして、先程からこの店の中を漂っている甘い匂いの正体は、このパンケーキ……ですか?」
「そうですね……。パンケーキの焼ける匂いと、蜂蜜の甘い香りなので……」
そこまで答えて、モニカは「あっ!」と、気づいたのだった。
「もしかして、あっちの世界にパンケーキは無いんですか?」
モニカの問いに、マキウスは静かに頷いたのだった。
「地方だけあって、自然に囲まれただけの何も無い場所ですよ?」
「それがいいんです! ここも、今の屋敷も、自然が少ないですから。たまには緑豊かな自然の力を感じて、癒されたいです!」
マキウスは目を見開いたが、すぐに笑みに変えた。
「では、落ち着いたら、ニコラも連れて一緒に行きましょう。母上の墓前に報告もしたいですし、祖父の代から世話になっている屋敷の者たちにも、自慢の妻と娘を会わせたいです」
「はい! その時を楽しみにしていますね!」
モニカはテーブル脇にあった白い布の埃除けを捲ると、中からは草で編まれた籠が出てきた。
籠の中からよく磨かれたナイフとフォークを取り出すと、マキウスに渡したのだった。
「さあ、冷めない内に食べましょう!」
このお店のパンケーキは、リコッタチーズが売りのフワフワ生地の二段パンケーキだった。
パンケーキの上には、たっぷりの生クリームと、いちごやベリーなどのフルーツが皿から溢れんばかりに乗せられて、彩りを豊かにしていた。
仕上げに、たっぷりの蜂蜜とベリーソースがパンケーキ全体にかけられており、食欲を唆る甘い香りが周囲を満たしていたのだった。
「うん。前と変わらず美味しいです……って、これも、以前私が食べた味を再現しているんでしたね」
モニカはパンケーキを切り分けると、生クリームやベリーソース、蜂蜜をつけて、上にフルーツを乗せて食べていた。
最後にこのお店のパンケーキを食べたのは、御國が階段から転落する数か月程前の春先だった。
あの時は春先だったこともあり、注目した季節のパンケーキは、イチゴとベリー、生クリームがたっぷり乗った春限定のパンケーキだった。
学生時代の友人と一緒にパンケーキを食べながら、お互いのことや周囲のことなどたくさん話した。
その時に、友人が仕事先で知り合った人と恋人関係になったと聞かされて、モニカは祝福したものだった。
友人は恋人と上手くやっているだろうか。
もう会うことは叶わないが、幸せになって欲しいと願っている。
しんみりした気持ちになって、ふとマキウスを見ると、まだ一口も食べておらず、ナイフとフォークを持ったまま固まっていたのだった。
「あれ? 食べないんですか?
マキウス様は甘いものがお好きだと思っていましたが……?」
その言葉に、一瞬、マキウスは驚いた顔をすると、やがて困ったように形の良い眉を顰めたのだった。
「モニカ……。この食べ物は何ですか?」
「何って、パンケーキですが……?」
「もしかして、先程からこの店の中を漂っている甘い匂いの正体は、このパンケーキ……ですか?」
「そうですね……。パンケーキの焼ける匂いと、蜂蜜の甘い香りなので……」
そこまで答えて、モニカは「あっ!」と、気づいたのだった。
「もしかして、あっちの世界にパンケーキは無いんですか?」
モニカの問いに、マキウスは静かに頷いたのだった。