再び、モニカはマキウスと並んで、アーケードを歩いて行ったが、いつもの場所に近づくにつれて、だんだんと心が騒ついてきたのだった。

(もうすぐだ。もうすぐ来る……)

 モニカはマキウスに悟られないように、マキウスの疑問に答え続けていった。

「モニカ、あそこは……?」
「ああ、あれはカフェですね……。あそ……」

 モニカはマキウスに答えている時だった。
 正面から来た人とぶつかったのだった。

「あっ……」
「モニカ!?」

 ふらついたモニカをマキウスが支えてくれた。

「いたっ!?」

 相手の顔を見なくても、声からしていつものカップルだと気づいた。

(ど、どうしよう……。とりあえず、謝らないと……)

 これまでとは違い、今回はマキウスがついている。
 とりあえず謝罪して、それで夢がどう変わるか様子を見てみよう。
 
「モニカ、大丈夫ですか?」

 モニカが真っ青な顔で俯いてからだろうか。
 マキウスが心配そうに覗き込んできたのだった。

「だ、大丈夫です……。マキウス様」
「大丈夫そうな顔ではありません!? どこか怪我をされましたか!? 痛みはありますか!?」
「だ、大丈夫です。本当に大丈夫ですから……」

 慌てるマキウスの声に対して、相手の女性か、連れの男性のどちらかが、舌打ちしてきたのだった。
 
「す、すみません……」

 モニカは謝るが、カップルは怒り続けていた。

「なにアイツ? 感じわる……」
「大丈夫か? あのブスが……」

 カップルは怒りながら、立ち去ろうとした。
 いつもならカップルが立ち去ったところで、夢が終わるはずだった。
 けれども、今回はいつもと違った。
 
「待ちなさい」
 
 静かに声を上げたのは、マキウスであった。
 カップルは不愉快そうに振り返った。

「貴方たちも、謝るべきです」
「あっ?」

 男性は不快そうに、マキウスを睨みつけていた。
 モニカがハラハラしながら見守っていると、マキウスはモニカの腕を掴んだのだった。

「モニカは謝りました。それなのに、貴方たちが謝らないのはおかしい。ぶつかったのは、貴方たちも同じはずです」

 マキウスは険しい目つきになると、カップルを睨め付けたのだった。

「何を言っているんだ。コイツ?」
「顔はいいのに、頭おかしいんじゃないのぉ~?」
「あのブスも可哀想~。でも、おかしいもの同士、お似合いなんじゃない」

 カップルは声を上げて、笑い合った。
 モニカは「マキウス様」と、小声でマキウスの腕を引いた。
 
「気にしていただいてありがとうございます。でも、私は大丈夫です。全然気にしていないので……」

 その時、マキウスはモニカの肩を抱いた。
 カップルに見せつけるようにモニカを引き寄せると、声を張り上げたのだった。
 
「我が妻への無礼、許す訳にはいきません!」

 マキウスの怒声がアーケード中に響き渡ったのだった。