カーネ族の特徴である耳がなくなって、心なしかマキウスが項垂れているようにも見えたので、慌てて「で、でも」と続けたのだった。

「この姿のマキウス様も、かっこよくて、素敵です!」
「いつもの私とどちらが良いですか?」
「そ、それは……どっちも同じくらい良いです!」

 真剣な顔で詰め寄られて、頬を染めながら答えると、マキウスは納得したのかあっさりと離してくれたのだった。

「それを言うのなら、貴女もです。……その姿が、以前の貴女なのですか?」

 マキウスは頭からは爪先まで、モニカを眺めながら訊ねてきた。
 モニカは苦笑しながら、首を振る。

「まさか。生前の私はここまで可愛く無いですよ」

 苦笑しながらスマートフォンを降ろすと、鞄の中にしまったのだった。

「ところで、マキウス様はどうして夢の中に……? と言っても、これは私が見ている夢だから聞くのも可笑しいですよね」

 モニカが笑うと「夢じゃありませんよ」と、しずかに返される。

「貴方の部屋から、私の魔力の波動を感じました。部屋に行くと、貴方が魔力を使って眠っていました。それも悪夢を見ているのか魘されていて……。
 私の魔力を使ってまで、どんな夢を見ているのか気になったから夢に入ったんです」

 寝ているモニカの指輪に、マキウスは手を重ねると、自分の魔力と同調させたらしい。
 自分の魔力をモニカの魔力に合わせ、そのまま意識をモニカに合わせた。
 すると、マキウスはこの夢の中に入ってこられたとのことだった。

「私が魔法石を使って、この夢を見ていたんですか?」
「そうです。覚えはありませんか?」

 モニカが首を振ると、マキウスは顎に手を当てて、何やら考えていたようだった。
 しばらくそうしていたが、やがて考えることを止めたようだった。

「今は考えるのを止めましょう。ところで、ここはモニカが知っている場所ですか?」
「はい。そうです! 私が生まれ育った場所です!」

 モニカの笑みに、マキウスも口元を緩めた。

「貴女が育った場所に興味があります。……案内をして頂けますか?」
「はい! 勿論です!」

 そうして、マキウスは手を差し出してきた。
 どうしたらいいかわからず、差し出した手を見つめていると、苦笑されたのだった。

「前にも言ったでしょう。こういう時は男性にエスコートしてもらうものです」
「そ、そうでしたね! すみません……」

 以前、初めて出掛けた時に言われたことを思い出して、自分の手をマキウスの大きな手に重ねる。
 手を握られると、二人はアーケードを歩き出したのだった。