その日の夜遅く。
ベッドサイドの明かりだけを点した暗い部屋で、マキウスは本を読んでいた。
「ん? これは……」
ページを捲ったところで、近くから魔力の波動を感じた。
マキウスは顔を上げると、辺りを見渡したのだった。
「随分と大きな……。でも、一体誰が、何の為に……」
マキウスたちカーネ族は、自分が魔力を使った時、または魔法石に宿った自分の魔力が使われた時に、その余波を波動となって身体中で感じることが出来た。
それを、「魔力の波動」と呼んでいた。
屋敷内の扉を開けるくらいの少量の魔力なら、魔力の波動を感じることはない。
だが、何かを生み出し、何かを消し去ってしまう様な大きな魔力なら、魔力の波動を感じるのだった。
(この屋敷で、私以外に私の魔力を持つ者は一人しかいません……まさか!)
マキウスは本を置いて明かりを消すと、部屋を出た。
屋敷内の暗い廊下を歩き、魔力の波動を辿ると、そこはモニカの部屋であった。
(やはり、この部屋でしたか)
マキウスは扉に近くと、他の使用人を起こさないように、小声で呼びかける。
「モニカ……?」
しばらく耳をすますが、部屋の中からは物音一つ聞こえてこなかった。
そっと部屋の扉を開けると、扉の隙間からは部屋中を満たす様な青白い光が漏れてきて、マキウスは目を瞑ったのだった。
「これは……!?」
マキウスの顔が強張った。慌てて扉を開けて、押し入る様に中に入る。
魔法石と同じ青色の光が、ベッドを中心に部屋の中を青色に染めていた。
まるで海の中にいるような、どこか幻想的な光景に魅了されそうになるが、すぐに我に返ると、光源となるベッドにそっと近く。
足音を立てないように、忍び足でそっと近づいたベッドを覗き込むと、そこにはモニカが眠っていた。
嫌な夢をみているのか、顔を歪めて魘されていたのだった。
「モニカ。起きて下さい!」
小声で呼びかけながら、モニカの身体を揺さぶるが、 起きる気配はなかった。
「モニカ……」
モニカの様子も気になるが、まずは魔力を抑える方が先であった。
モニカを観察していると、どうやら左手の辺りが光源のようだった。
そっと掛布を捲ると、モニカの指先から放たれていた青色の光が、一際強く部屋を照らしたのだった。
「やはり、そうでしたか……」
マキウスは眉を寄せた。
青色の光は、モニカが身につけている青色の石がはまった指輪ーー魔法石の指輪から出ていたのだった。
モニカは全く気づいていないようだったが、魔法石に宿っている魔力の消耗が日に日に激しくなっていた。
扉を開閉するだけなら、ここまで消耗しない。
一体、どこでどんな使い方をすれば、ここまで消耗するのか。
マキウスは補給をする度に、その消費量を不思議に思っていたが、どうやら夜間にモニカが使っていたらしい。
本人の意思が関係しているのか、関係していないのかはわからないが。
モニカ自身が望んで使用しているのか、魔法石から漏れ出た魔力が、モニカに影響を与えているのかはわからない。
ただ、モニカが魔力の影響を受けているこの状況は非常に厄介であった。
「なんとか、しなければ……」
マキウスはモニカの傍らに跪くと、魔法石の指輪をつけた手を取った。
「貴女は……今、どんな夢を、どんな気持ちで見ているのでしょうか?」
マキウスは指輪に口づけると、その手を強く握った。
反対の手で指輪に触れると、部屋中を青く染める光がひと際大きくなった。
そのまま、マキウスはそっと目を閉じたのだった。
ベッドサイドの明かりだけを点した暗い部屋で、マキウスは本を読んでいた。
「ん? これは……」
ページを捲ったところで、近くから魔力の波動を感じた。
マキウスは顔を上げると、辺りを見渡したのだった。
「随分と大きな……。でも、一体誰が、何の為に……」
マキウスたちカーネ族は、自分が魔力を使った時、または魔法石に宿った自分の魔力が使われた時に、その余波を波動となって身体中で感じることが出来た。
それを、「魔力の波動」と呼んでいた。
屋敷内の扉を開けるくらいの少量の魔力なら、魔力の波動を感じることはない。
だが、何かを生み出し、何かを消し去ってしまう様な大きな魔力なら、魔力の波動を感じるのだった。
(この屋敷で、私以外に私の魔力を持つ者は一人しかいません……まさか!)
マキウスは本を置いて明かりを消すと、部屋を出た。
屋敷内の暗い廊下を歩き、魔力の波動を辿ると、そこはモニカの部屋であった。
(やはり、この部屋でしたか)
マキウスは扉に近くと、他の使用人を起こさないように、小声で呼びかける。
「モニカ……?」
しばらく耳をすますが、部屋の中からは物音一つ聞こえてこなかった。
そっと部屋の扉を開けると、扉の隙間からは部屋中を満たす様な青白い光が漏れてきて、マキウスは目を瞑ったのだった。
「これは……!?」
マキウスの顔が強張った。慌てて扉を開けて、押し入る様に中に入る。
魔法石と同じ青色の光が、ベッドを中心に部屋の中を青色に染めていた。
まるで海の中にいるような、どこか幻想的な光景に魅了されそうになるが、すぐに我に返ると、光源となるベッドにそっと近く。
足音を立てないように、忍び足でそっと近づいたベッドを覗き込むと、そこにはモニカが眠っていた。
嫌な夢をみているのか、顔を歪めて魘されていたのだった。
「モニカ。起きて下さい!」
小声で呼びかけながら、モニカの身体を揺さぶるが、 起きる気配はなかった。
「モニカ……」
モニカの様子も気になるが、まずは魔力を抑える方が先であった。
モニカを観察していると、どうやら左手の辺りが光源のようだった。
そっと掛布を捲ると、モニカの指先から放たれていた青色の光が、一際強く部屋を照らしたのだった。
「やはり、そうでしたか……」
マキウスは眉を寄せた。
青色の光は、モニカが身につけている青色の石がはまった指輪ーー魔法石の指輪から出ていたのだった。
モニカは全く気づいていないようだったが、魔法石に宿っている魔力の消耗が日に日に激しくなっていた。
扉を開閉するだけなら、ここまで消耗しない。
一体、どこでどんな使い方をすれば、ここまで消耗するのか。
マキウスは補給をする度に、その消費量を不思議に思っていたが、どうやら夜間にモニカが使っていたらしい。
本人の意思が関係しているのか、関係していないのかはわからないが。
モニカ自身が望んで使用しているのか、魔法石から漏れ出た魔力が、モニカに影響を与えているのかはわからない。
ただ、モニカが魔力の影響を受けているこの状況は非常に厄介であった。
「なんとか、しなければ……」
マキウスはモニカの傍らに跪くと、魔法石の指輪をつけた手を取った。
「貴女は……今、どんな夢を、どんな気持ちで見ているのでしょうか?」
マキウスは指輪に口づけると、その手を強く握った。
反対の手で指輪に触れると、部屋中を青く染める光がひと際大きくなった。
そのまま、マキウスはそっと目を閉じたのだった。