「モニカ様。今夜のニコラ様の授乳は如何しますか?」
「そうですね……。今日はアマンテさんにお願いしてもいいですか?
 マキウス様から、二人きりで夕食を食べたいと言われていたので」
 
 昨晩、魔法石にマキウスの魔力を補充してもらう際に、「たまには二人きりの夫婦水入らずの晩餐を共にしたいものです」と、拗ねたように言われてしまった。
 きっと、昨日の昼食の席で、モニカがヴィオーラとばかり話していたのが、気に入らなかったのだろう。
 モニカ自身も、ニコラの離乳食を始めてからマキウスと食べる機会は減ってしまったーー勿体ないからと離乳食の余りで食事を済ませていた。ので、楽しみだった。

(なんだか、二人きりになりたいだけじゃないような気もするけど……)

 なんとなくだが、マキウスがヴィオーラと話した日から、マキウスの距離が近くなった様な気がしていた。
 前よりもマキウスが部屋を訪れる回数が増え、会話も増えた。

 魔法石への魔力の補充時や、ニコラと遊んでいる時以外でも、例えば、気分転換に屋敷内や庭を散歩している時や、ティカに頼んで用意してもらったこの国に関する本や育児に関する本を読んでいる時など、マキウスの方から声を掛けくれるようになった。

 今までは、部屋の外ではあまり話しかけてこなかったのに、一体どうしたのかーー。

「畏まりました。ニコラ様はお任せ下さい」
「いつもありがとうございます」
「いいえ。お役に立てるなら何よりです。私はこの遊具を片付けた後に、ニコラ様を連れて退室します。
 今日はこのままお預かりしますので、旦那様との有意義な時間をお過ごし下さい」
「え……。でも、それだとアマンテさんが……」
「旦那様からも、たまにはモニカ様をゆっくり休ませるように言われています。きっと、ニコラ様の相手をされていてお疲れだろうと。旦那様が帰宅されるまでゆっくりお過ごし下さい」
「あ……じゃ、じゃあ、お言葉に甘えます……」
「はい」

 アマンテは手早く倉庫部屋におもちゃを片付けると、ニコラを連れて退室したのだった。