少し歩くと、ガラス張りの大手携帯電話ショップが見えた。
最新機種の宣伝ポスターが貼られた携帯電話ショップの前を通る時、ガラスが反射して自分の姿が写った。
「あ……」
息を呑むと、その場で立ち止まってしまった。
ガラスに映っていたのは、黒髪黒目の若い女性であった。
生前、日本人だった御國にとっては、見慣れたありきたりな色。
けれども、顔形や声、胸の大きさといった容姿はモニカのままだった。
(ゲームで例えるなら、モニカの色違いみたい……)
苦笑すると、ガラス越しに、肩に掛けていた鞄の存在を思い出す。
肩に掛けていた小さな肩掛け鞄を開けると、中には使い慣れた茶色の財布と、使い慣れたスマートフォンが入っていた。
財布の中身は、御國が階段から落ちた時と同じ残高であった。
クレジットカードや金券、あちこちのお店のポイントカード類もそのままになっていた。
スマートフォンも確認すると、電源は入っていたが、電波状況は「圏外」となっていたのだった。
それ以外で目ぼしいものは、ハンカチやポケットティッシュ、化粧ポーチ、読みかけの文庫本、飴くらいであった。
「この状況を説明する物はないか……」
諦めて、モニカがアーケード街を歩き続けると、目の前から二十代くらいの派手な見た目の若いカップルが歩いてきた。
(あれは……)
息が苦しくなり、胸の鼓動が早くなった。
モニカにとっては、忘れもしないカップルだった。
若者に流行りのファッションに、茶色に染めた髪を今風にアレンジした髪型。
周りの通行人とは明らかに違う一際目立つオシャレなカップルと、身を小さくしたモニカはすれ違ったのだった。
すれ違い様に、モニカとカップルの女性の肩がぶつかった。
「いたっ!?」
女性はモニカとぶつかった肩を手で押さえていた。
(また、「あの時」と一緒……)
顔を合わせたくなくて、モニカは目を伏せたまま小さく頭を下げた。
「す、すみません……!」
モニカは小声で謝ると、女性と女性を心配する男性の横をそのまま行き過ぎようとした。
けれども、背後から「チッ」という舌打ちが聞こえてきたのだった。
「大丈夫か!? 怪我は……」
「あのブスが……」
「いいよ。ブスには何を言っても無駄だし……」
「ああ。ブスだから一人なんだな……」
「そうそう。ブスだからきっと男もいないのよ。可哀想……。それに比べて、あたしには素敵な彼氏がいるからね~!」
「くっつくなよ。歩きづらいだろう!」
仲睦まじい様子の二人にモニカの胸が強く痛んだ。
咄嗟に鞄を漁るが、いつも持ち歩いている「アレ」が無いことに気づいて愕然とした。
「ご、ごめんなさい……!」
モニカは両手で耳を塞ぐと、怪訝な顔をする通行人たちを追い抜き、どこまでも走って行った。
(どうして……! どうして「あの時」と同じことが起こるの!?)
忘れたはずなのに、どうして再現されるのか。
しばらく走ると、息が切れそうになった。
近くにあったアーケードの柱の前で立ち止まると、肩で大きく息を吐いた。
「はあ……はあ……」
目からは涙が溢れ落ちそうになった。
そこは、モニカは目を覚ましたのだった。
最新機種の宣伝ポスターが貼られた携帯電話ショップの前を通る時、ガラスが反射して自分の姿が写った。
「あ……」
息を呑むと、その場で立ち止まってしまった。
ガラスに映っていたのは、黒髪黒目の若い女性であった。
生前、日本人だった御國にとっては、見慣れたありきたりな色。
けれども、顔形や声、胸の大きさといった容姿はモニカのままだった。
(ゲームで例えるなら、モニカの色違いみたい……)
苦笑すると、ガラス越しに、肩に掛けていた鞄の存在を思い出す。
肩に掛けていた小さな肩掛け鞄を開けると、中には使い慣れた茶色の財布と、使い慣れたスマートフォンが入っていた。
財布の中身は、御國が階段から落ちた時と同じ残高であった。
クレジットカードや金券、あちこちのお店のポイントカード類もそのままになっていた。
スマートフォンも確認すると、電源は入っていたが、電波状況は「圏外」となっていたのだった。
それ以外で目ぼしいものは、ハンカチやポケットティッシュ、化粧ポーチ、読みかけの文庫本、飴くらいであった。
「この状況を説明する物はないか……」
諦めて、モニカがアーケード街を歩き続けると、目の前から二十代くらいの派手な見た目の若いカップルが歩いてきた。
(あれは……)
息が苦しくなり、胸の鼓動が早くなった。
モニカにとっては、忘れもしないカップルだった。
若者に流行りのファッションに、茶色に染めた髪を今風にアレンジした髪型。
周りの通行人とは明らかに違う一際目立つオシャレなカップルと、身を小さくしたモニカはすれ違ったのだった。
すれ違い様に、モニカとカップルの女性の肩がぶつかった。
「いたっ!?」
女性はモニカとぶつかった肩を手で押さえていた。
(また、「あの時」と一緒……)
顔を合わせたくなくて、モニカは目を伏せたまま小さく頭を下げた。
「す、すみません……!」
モニカは小声で謝ると、女性と女性を心配する男性の横をそのまま行き過ぎようとした。
けれども、背後から「チッ」という舌打ちが聞こえてきたのだった。
「大丈夫か!? 怪我は……」
「あのブスが……」
「いいよ。ブスには何を言っても無駄だし……」
「ああ。ブスだから一人なんだな……」
「そうそう。ブスだからきっと男もいないのよ。可哀想……。それに比べて、あたしには素敵な彼氏がいるからね~!」
「くっつくなよ。歩きづらいだろう!」
仲睦まじい様子の二人にモニカの胸が強く痛んだ。
咄嗟に鞄を漁るが、いつも持ち歩いている「アレ」が無いことに気づいて愕然とした。
「ご、ごめんなさい……!」
モニカは両手で耳を塞ぐと、怪訝な顔をする通行人たちを追い抜き、どこまでも走って行った。
(どうして……! どうして「あの時」と同じことが起こるの!?)
忘れたはずなのに、どうして再現されるのか。
しばらく走ると、息が切れそうになった。
近くにあったアーケードの柱の前で立ち止まると、肩で大きく息を吐いた。
「はあ……はあ……」
目からは涙が溢れ落ちそうになった。
そこは、モニカは目を覚ましたのだった。