そうして迎えたヴィオーラの訪問当日。
 たくさんの手土産と共にやってきたヴィオーラを、モニカは出迎えたのだった。

「こんにちは。ヴィオーラ様」
「モニカさん、こんにちは。本日はお招きありがとうございます」

 今日のヴィオーラは、白色のシャツに青色の上着、紺色のリボンタイと、ヴィオーラの細身を強調するようなズボン。足元は黒色のブーツ姿であった。
 その姿は姉弟だけあって、マキウスにそっくりだった。

「あの……ヴィオーラ様はドレス姿ではないんですね」
「ええ。本来なら貴族の女性としてドレスで着飾るものですが、騎士たる私は動きやすさを重視して、つい男子と同じ様な格好をしてしまうんです」
「そうだったんですね……。でも、かっこいいです。私もそういう格好をたまにはしたいんですが……」

 御國だった頃は、それこそヴィオーラに似た格好しかしていなかった。
 まさか、毎日、足首まである動きづらいドレスを着て、ヒールを履くようになるとは思わなかった。

「ありがとうございます。でも、モニカさんは貴族として相応しい格好をして下さい。
 ドレスの方が可憐なモニカさんには似合いますので」
「そ、そうですか……」

 さすが姉弟と言えばいいのだろうか。
 マキウスと同じ様に、恥ずかしげもなくさらりと言われてしまい、モニカは面食らってしまった。

「今日はモニカさんとニコラさんにお土産を持ってきました。といっても、我が家で余っていたものですが……」

 ヴィオーラが連れてきた使用人から、お土産を見せてもらう。
 お土産は、ヴィオーラが貴族としての「友人」より頂いた菓子や茶葉もあった。

 それ以外でも、ヴィオーラが幼少期に着ていた服や、ヴィオーラが仕立てたが着なかったドレス、身につけなかったアクセサリーなどの装飾品類があったのだった。

「ドレスは仕立てたものの一度も袖を通さなかったものを最新の型に直してみました。よければ、モニカさんが普段着として着て下さい。
 ニコラさんもこれから成長されるでしょう。汚れてもいい服が必要かと思ったので……。
 私の古着で申し訳ありませんが……」
「とんでもないです! ありがとうございます。ヴィオーラ様!」

 ヴィオーラは申し訳なさそうに言っていたが、モニカには充分過ぎるくらいであった。

 モニカは別として、ニコラはこれからどんどん成長する。
 これから離乳食が始まり、やがてニコラは自分で食事をするようになるだろう。
 手の平と足の膝で身体のバランスがとれるようになれば、ハイハイをするようになり、やがて自分の足で歩くようになる。

 そんなニコラに付き合うモニカを含めて、服を汚す機会は今よりもっと増えるはず。
 そんな時に汚してもいい服があるのはありがたいことだった。

 マキウスが使用人を通じて用意してくれる服は、どれも華やかなデザインのドレスが多く、汚すのを躊躇われていた。

「喜んでいただけたなら嬉しいです。まだまだ屋敷にあるので、折りを見て、また使用人に届けさせますね」
「ありがとうございます。さあ、中にどうぞ。ニコラも待っています」

 モニカは改めてヴィオーラに感謝を伝えると、先日と同じ応接間に案内したのだった。