マキウスとヴィオーラが会う機会はすぐに訪れた。
 モニカがヴィオーラに魔法石の御礼の手紙を出す際に、ヴィオーラとマキウスの休暇は必ず重なるとペルラに教えてもらったからだった。
 
 隊長のヴィオーラが休みの日は、副官であるマキウスを始め、同じ隊に所属している騎士も全員休みになる。

 常に最善の力を出して仕事が出来るように、という騎士団の規則にあるらしい。それを破って仕事をした時や、部下に仕事をやらせて隊長だけ休暇を取った際は処罰もあるらしい。
 休暇の数も隊毎に平等になるように、書類仕事担当の騎士ーー主に騎士団所属の女性騎士達、が決めているというのも、モニカには驚きであった。

 そうして、その調整によって、ヴィオーラの隊に限らず、騎士団に所属する全ての隊は、隊毎に交互に必ず休みになるようになっているのだった。

(元の世界でも、そういう規則が欲しかったなあ……)
 
 御國だった頃の経験から、そんなことを考えつつ、モニカは御礼の手紙の中で、「先日、時間が無くて会わせられなかったニコラを会わせたい」という旨を書いた。
 ヴィオーラから見て姪に当たるニコラを会わせるのは建前であり、本当はマキウスと話す機会を設けたいというのが本命だったが。

 ヴィオーラがその意図に気づいたのか、いないのか、判然とはしないが返事はすぐにきた。
 スミレの様な甘い香り付きの薄紫色の便箋には、「次の休みには、時間が取れます」と流麗な字で書かれていた。
 モニカはすぐヴィオーラに返事を書くと、その日に屋敷に来てくれるようにお願いしたのだった。
 
 マキウスには「ヴィオーラが来るから次の休みは予定を入れないで欲しい」、とだけ伝えた。
 ヴィオーラにニコラを会わせるとだけ伝えて、ヴィオーラとマキウスが会うという話は敢えてしなかった。
 あらかじめ、マキウスにその話をしたら、それこそ予め用意した台本に書かれたような――型にはまったような、ありきたりな話しかしないような気がしたからだった。
 
 マキウスに話をした後は、ペルラやアマンテ、ティカたちにこっそり頼んで、姉弟が二人きりになれるように協力を要請した。
 特にペルラとアマンテの親子は、マキウスたち姉弟のことを気に掛けており、モニカに協力的であった。
 そんな使用人たちの手を借りつつ、モニカはマキウスにバレないように準備をしたのだった。