「モニカ。嫌な時ははっきり言って下さい。……そうでなければ、私は止められません。こんなに愛おしい人を目の前にして」
「……はい。マキウス様」

 そうして、マキウスはモニカに口づけた。
 モニカの身体中が激しく熱を帯びていた。気持ちがよくて、頭の中が蕩けてしまいそうになる。
 
 銀の糸と共に口を離したマキウスは、モニカのドレスに手を掛けた。
 前開きのドレスのボタンを外すと、はだけた胸元から緑色に輝くペンダントが出てくる。
 このペンダントを入手した経緯を思い出したのか、マキウスは笑ったのだった。

「モニカの夢は、とても心地良い夢でした」
「そうですか? でも、マキウス様と出掛けられたのは、とても楽しかったです」
「あの時食べた……パンケーキという食べ物でしたか? また食べてみたいです」
「材料があれば作れますよ。勿論、厨房をお借りして良ければの話になりますが……」
「屋敷の夫人が厨房に立つなど……と、貴女の夫として怒るべきところではありますが、貴女の手料理に興味があります。使えるように手配しておきます」
「ありがとうございます。美味しく作りますね」
「多少不細工でも気にしませんよ。これも姉上の鍛えられましたからね。一時期、姉上が料理に興味を持ったことがあって、成功作も、そうじゃないものも、数えきれないほど食べさせられて……寝込んだこともありました」
「苦労されたんですね……」
「これも貴女と出会う為の試練だったと考えれば、あの振り回された日々も無駄ではなかったと思えます」

 辛いはずだった過去もマキウスのおかげで、楽しい思い出に変わった。
 これからもマキウスと楽しい思い出を作っていけるだろうか。ーーこの世界で。

「またお出掛けしたいです。今度はマキウス様と、この世界を」
「ええ。いつでもお連れしますよ。貴方のお望みのままに」
 
 マキウスはモニカのはだけた首元にそっと口づけを落とす。
 柔らかな唇に力を入れると、チュッと音を立てながらモニカの白磁の肌を吸い込んだのだった。

「あっ……!」

 吸い込まれたモニカの肌が、朱色に変わっていた。
 それに魅入っていると、唇を離したマキウスは、今度は別の場所に口づけてきた。

「あの……。私、まだ身体を流していないんです。汚いですし、今じゃなくても……」

 本当はニコラに授乳をした後、マキウスと入れ違いに沐浴をする予定だった。
 いつもは沐浴まで済ませてから、寝室で待つマキウスと少し話してから寝るが、なんとなく今日は沐浴よりも先にマキウスと話したい気分だったので、マキウスと少し話した後に、沐浴をするつもりであった。