ヴィオーラやリュドヴィックと話した日の夜。
 ニコラの授乳を終えて、元の世界で有名な子守歌を歌っていたモニカだったが、歌い終わると、腕の中のニコラに声を掛けた。

「ニコラ。すっかり大きくなったね」

 ニコラはじっとモニカを見つめ返してくる。
 最近では授乳の時間も安定して、離乳食も問題なく食べていた。
 最初に出会った頃より、身体も大きくなってきた。
 出会ったばかりの頃は薄っすらと生えていたモニカと同じ金色の髪も、日に日に量が増えてきたのだった。

「私はマキウス様が好き……。好きなの」

 マキウスのことを考えると、胸がバクバクと大きな音を立てた。
 ーー日を増すごとに、マキウスに触れられたいと、温もりを感じたいと、欲求を感じる様になっていた。
 一体、自分はどうしてしまったのだろうと思う。
 御國の頃だったら、絶対に思わなかった。人に触れられることさえ怖くて、親しい人以外とは関わらない様にしていたのに。
 この世界に来てから、モニカは自分がどんどん変わっていくように感じていた。
 マキウスに触れられたいとーーマキウスを感じたいと、身も心を求めていた。

「こんな風に今まで誰かを好きになったことは無いの。これまでは」

 モニカは腕につけている魔法石のブレスレットをじっと見つめた。同じように腕の中のニコラもじっとブレスレットを見つめて、手を伸ばしていることに気づくと、視線を戻してそっと微笑む。

「きっと、これから先。もし、マキウス様以外の男性と出会えても、マキウス様以上に愛せない気がするの。それだけ、私の中でマキウス様の存在が大きいの」

 もう、マキウス以外の男性を愛することは出来ない。
 モニカの中で、マキウスの存在はとてつもなく大きいものになっていたのだった。

「だからね。これから先、マキウス様の身に何があっても、私は一生ついて行く。その時はニコラも一緒に来てくれる?」

 自分の名前に反応したニコラは、またモニカを見つめた。
 そうして、肯定するかのようにモニカに向けて笑いかけてきたのだった。

「……随分といじらしいことを言ってくれるんですね」
「マキウス様!?」

 いつの間にか、部屋の扉が開いていた。部屋着に着替えたマキウスは、モニカたちの側までやって来たのだった。