「それなら、大丈夫です。子供の頃から、マキウスは嫌な時ははっきり嫌と言います。耳を触らせてくれたのだって、モニカさんを信じていたからです。耐えていたのは、そうですね……。モニカさんが側にいて恥ずかしかったからでしょうか」
「そうなんですか……?」
「私はマキウスではないので、これはあくまでも私の推測になりますが……。マキウスはああ見えて、恥ずかしがり屋なところがあります。好きな女性が目の前にて、緊張してしまったというのもあると思います」
「好きな女性ですか……。あの、お姉様……」
モニカは胸を押さえると、目を伏せながら口を開く。
「マキウス様はどうして、私のことを愛してくれるのでしょうか? マキウス様は、私が『モニカ』じゃないって話した時から、私を大切に想ってくれました。今では、愛しているとも……。それは、どうしてでしょうか?」
最初に、モニカじゃないと明かした時から、マキウスは「貴女の様な素敵な方を失わなくて良かった」と言っていた。
それからも、ことあるごとにマキウスはモニカに優しくしてくれた。
あれはどうしてなのだろう。
モニカじゃないと明かすまで、マキウスとはさほど、話していなかったのに。
「モニカさん」
ヴィオーラはモニカの両頬に手を添えると、歳の離れた弟妹を慰めるように優しく話し出した。
「何故、『花嫁』に選ばれることが名誉なのか、知っていますか?」
モニカの義兄のリュドヴィックが、モニカが幸せになることを願ったことで、モニカは「花嫁」に加えてもらうという名誉を賜ったという話は聞いていた。
ただ、なぜ「花嫁」に選ばれることが名誉あることなのか、その理由をモニカは知らなかった。
モニカが首を振ると、ヴィオーラは柔和な笑みを浮かべた。
「私たちカーネ族は、一度愛した者を生涯愛し続ける種族です。たとえ、死が二人を分かつことになっても……」
「そうなんですか……?」
「我が国はガランツスや他の国に比べて、昔から離婚率が低いと聞いています。それは、私たちカーネ族は、愛であれ、信頼であれ、一度、情を向けた相手を生涯大切に想い、忠順になる傾向があるからと言われています。モニカさんたちの様なユマン族は知りませんが、私たちカーネ族は好きな人が出来ると直情的になる傾向があります。その人に見て欲しい、好きになって欲しいと、その人だけを熱愛します」
気のせいだろうか。いつも以上に、ヴィオーラのアメシストの様な目が光り輝いているようにも見えた。
「それは相手が『花嫁』でも同じなんですか? カーネ族同士だけではなく?」
「ええ。よほどのことがない限り、国が迎え入れた『花嫁』たちも、夫から離縁されることや、国に帰されることもありません。
勿論、中には複数人の異性を愛してしまう者もいますが……それでも、皆、平等に愛そうとします」
流星群の日、マキウスも言っていた。「最初は『モニカ』も今のモニカも、平等に愛そうとした」と。
あれは、カーネ族特有の愛情だったのだろうか。
「何かきっかけはありませんか? モニカさんからマキウスにしたこととか」
「きっかけになるかはわかりませんが……この世界に来たばかりの頃、マキウス様が馬車事故の調査をしていて、帰宅が遅くなったことがありました。私はマキウス様が事故に遭ったとばかり思って心配して……」
この世界に来て、まだマキウスとさほど仲が深まっていなかったばかりの頃、馬車事故に遭ったと勘違いして、帰宅したマキウスに縋り付いてしまったことがあった。
きっかけになるようなことといえば、これくらいしか思いつかなかった。
この話を聞いたヴィオーラは、どこか意味深に頷いただけであった。
「そうなんですか……?」
「私はマキウスではないので、これはあくまでも私の推測になりますが……。マキウスはああ見えて、恥ずかしがり屋なところがあります。好きな女性が目の前にて、緊張してしまったというのもあると思います」
「好きな女性ですか……。あの、お姉様……」
モニカは胸を押さえると、目を伏せながら口を開く。
「マキウス様はどうして、私のことを愛してくれるのでしょうか? マキウス様は、私が『モニカ』じゃないって話した時から、私を大切に想ってくれました。今では、愛しているとも……。それは、どうしてでしょうか?」
最初に、モニカじゃないと明かした時から、マキウスは「貴女の様な素敵な方を失わなくて良かった」と言っていた。
それからも、ことあるごとにマキウスはモニカに優しくしてくれた。
あれはどうしてなのだろう。
モニカじゃないと明かすまで、マキウスとはさほど、話していなかったのに。
「モニカさん」
ヴィオーラはモニカの両頬に手を添えると、歳の離れた弟妹を慰めるように優しく話し出した。
「何故、『花嫁』に選ばれることが名誉なのか、知っていますか?」
モニカの義兄のリュドヴィックが、モニカが幸せになることを願ったことで、モニカは「花嫁」に加えてもらうという名誉を賜ったという話は聞いていた。
ただ、なぜ「花嫁」に選ばれることが名誉あることなのか、その理由をモニカは知らなかった。
モニカが首を振ると、ヴィオーラは柔和な笑みを浮かべた。
「私たちカーネ族は、一度愛した者を生涯愛し続ける種族です。たとえ、死が二人を分かつことになっても……」
「そうなんですか……?」
「我が国はガランツスや他の国に比べて、昔から離婚率が低いと聞いています。それは、私たちカーネ族は、愛であれ、信頼であれ、一度、情を向けた相手を生涯大切に想い、忠順になる傾向があるからと言われています。モニカさんたちの様なユマン族は知りませんが、私たちカーネ族は好きな人が出来ると直情的になる傾向があります。その人に見て欲しい、好きになって欲しいと、その人だけを熱愛します」
気のせいだろうか。いつも以上に、ヴィオーラのアメシストの様な目が光り輝いているようにも見えた。
「それは相手が『花嫁』でも同じなんですか? カーネ族同士だけではなく?」
「ええ。よほどのことがない限り、国が迎え入れた『花嫁』たちも、夫から離縁されることや、国に帰されることもありません。
勿論、中には複数人の異性を愛してしまう者もいますが……それでも、皆、平等に愛そうとします」
流星群の日、マキウスも言っていた。「最初は『モニカ』も今のモニカも、平等に愛そうとした」と。
あれは、カーネ族特有の愛情だったのだろうか。
「何かきっかけはありませんか? モニカさんからマキウスにしたこととか」
「きっかけになるかはわかりませんが……この世界に来たばかりの頃、マキウス様が馬車事故の調査をしていて、帰宅が遅くなったことがありました。私はマキウス様が事故に遭ったとばかり思って心配して……」
この世界に来て、まだマキウスとさほど仲が深まっていなかったばかりの頃、馬車事故に遭ったと勘違いして、帰宅したマキウスに縋り付いてしまったことがあった。
きっかけになるようなことといえば、これくらいしか思いつかなかった。
この話を聞いたヴィオーラは、どこか意味深に頷いただけであった。