「モニカさん。ダンスや礼儀作法はどうですか? 出来ますか?」
「ダンスは中学校が最後で、礼儀作法は育児の合間にペルラさんに教わっていますが、どちらも自信が無くて……」
「それなら、ダンスの講師も、礼儀作法の講師も、うちで手配しましょう。どちらも腕利きの者を知っているので」
「いいんですか!?」
モニカが顔を輝かせると、ヴィオーラは笑顔で頷いた。
「勿論です。大切な義妹に恥をかかせる訳にはいきません」
「ありがとうございます! お姉様!」
歓喜のあまり、ヴィオーラに抱きつきたい衝動に駆られていると、傍らのマキウスが不機嫌そうに咳払いをしたのだった。
「姉上。モニカを取らないで下さい。モニカは私の妻。大切な伴侶です」
「取るだなんて……私は可愛い義妹の力になれればと思って、言っているだけですよ」
「それもどうだか……。騎士団でも数多くの女性騎士を惚れさせているともっぱらの噂です。少しは婚期を逃している騎士たちの気持ちも考えて下さい」
「惚れさせているのではなく、ただ優しく接しているだけです。勿論、時には厳しく接しますが、その分、優しくする時は徹底的に優しくします」
つまり、飴と鞭を使い分けているということだろうか。厳しく接しているヴィオーラが想像出来ないが、騎士としてのヴィオーラは、やはり義姉としてのヴィオーラとは、別の顔を持っているのだろう。
そんな義姉の顔を知っているのか、小さく溜め息を吐いたマキウスだったが、すぐにいつもの顔に戻る。
「話を戻しましょう。『花嫁』の中に異なる世界から来た者が混ざっているという話でしたね」
「そうです。今回、迎え入れた『花嫁』の中には、それらしき者がいると噂になっていなかったので、今回はいないと思っていました。ですが、どうやら違ったようですね。一人、居たわけですから」
「ヴィオーラ殿。それは、もしや……」
「私?」
モニカが自らの顔を指差していると、リュドヴィックとマキウスは揃って見つめてきたのだった。
ヴィオーラによると、『花嫁』の中に、毎回必ず入っている訳では無いらしい。
ただ、その異なる世界からやって来た者は、必ず国から選ばれた「花嫁」と同じ姿形をしているとされていた。
どの基準で、どういった理由で、現れるのかはわかっていなかった。
人数も決まっている訳ではなく、一人の時もあれば、数人の時もあった。
そんな不規則にも見える「花嫁」だが、判明しているところもある。
まず、「花嫁」に選ばれた前後に、瀕死の重症、または死亡した「花嫁」の姿であること。
同時期に同じ姿の「花嫁」が、二人同時に現れるということはないらしい。
その「花嫁」も、王族か又は王族の血筋を引く者ーー侯爵家が選んだ「花嫁」の元にしか現れないと言われていた。
今のところ、公爵や伯爵以下の家に嫁いだ「花嫁」の元に現れたことは、これまで無いらしい。
「ダンスは中学校が最後で、礼儀作法は育児の合間にペルラさんに教わっていますが、どちらも自信が無くて……」
「それなら、ダンスの講師も、礼儀作法の講師も、うちで手配しましょう。どちらも腕利きの者を知っているので」
「いいんですか!?」
モニカが顔を輝かせると、ヴィオーラは笑顔で頷いた。
「勿論です。大切な義妹に恥をかかせる訳にはいきません」
「ありがとうございます! お姉様!」
歓喜のあまり、ヴィオーラに抱きつきたい衝動に駆られていると、傍らのマキウスが不機嫌そうに咳払いをしたのだった。
「姉上。モニカを取らないで下さい。モニカは私の妻。大切な伴侶です」
「取るだなんて……私は可愛い義妹の力になれればと思って、言っているだけですよ」
「それもどうだか……。騎士団でも数多くの女性騎士を惚れさせているともっぱらの噂です。少しは婚期を逃している騎士たちの気持ちも考えて下さい」
「惚れさせているのではなく、ただ優しく接しているだけです。勿論、時には厳しく接しますが、その分、優しくする時は徹底的に優しくします」
つまり、飴と鞭を使い分けているということだろうか。厳しく接しているヴィオーラが想像出来ないが、騎士としてのヴィオーラは、やはり義姉としてのヴィオーラとは、別の顔を持っているのだろう。
そんな義姉の顔を知っているのか、小さく溜め息を吐いたマキウスだったが、すぐにいつもの顔に戻る。
「話を戻しましょう。『花嫁』の中に異なる世界から来た者が混ざっているという話でしたね」
「そうです。今回、迎え入れた『花嫁』の中には、それらしき者がいると噂になっていなかったので、今回はいないと思っていました。ですが、どうやら違ったようですね。一人、居たわけですから」
「ヴィオーラ殿。それは、もしや……」
「私?」
モニカが自らの顔を指差していると、リュドヴィックとマキウスは揃って見つめてきたのだった。
ヴィオーラによると、『花嫁』の中に、毎回必ず入っている訳では無いらしい。
ただ、その異なる世界からやって来た者は、必ず国から選ばれた「花嫁」と同じ姿形をしているとされていた。
どの基準で、どういった理由で、現れるのかはわかっていなかった。
人数も決まっている訳ではなく、一人の時もあれば、数人の時もあった。
そんな不規則にも見える「花嫁」だが、判明しているところもある。
まず、「花嫁」に選ばれた前後に、瀕死の重症、または死亡した「花嫁」の姿であること。
同時期に同じ姿の「花嫁」が、二人同時に現れるということはないらしい。
その「花嫁」も、王族か又は王族の血筋を引く者ーー侯爵家が選んだ「花嫁」の元にしか現れないと言われていた。
今のところ、公爵や伯爵以下の家に嫁いだ「花嫁」の元に現れたことは、これまで無いらしい。