次の日の夕方、マキウスから早馬で帰宅の連絡をもらったモニカが屋敷の玄関で待っていると、屋敷の馬車で、マキウス、ヴィオーラ、リュドヴィックの三人がやって来た。

「モニカ」
「マキウス様、お帰りなさい! 今日もお仕事お疲れ様でした!」
「モニカも、私が仕事に行っている間、ニコラと屋敷をありがとうございます」
「モニカさん。昨晩ぶりですね」
「お姉様、お兄ちゃん!」

 ヴィオーラは仕事が終わると、そのままマキウスの馬車でやって来たらしく、騎士団の制服姿だった。
 リュドヴィックは以前、屋敷に来た時と同じ普段着だったが、騎士団の詰め所である城の前で待ち合わせをして、一緒にやって来たとのことだった。

 昨晩とは違い、いつも通りのヴィオーラに安堵しつつ、ヴィオーラの傍らに佇むリュドヴィックに視線を移す。
 複雑な表情で見つめ返してくるリュドヴィックに、モニカは小さく苦笑したのだった。

 マキウスの案内で、四人はいつもとは違う応接間に向かった。
 マキウスが帰宅前に早馬で指示を出していたのか、応接間にはティカとエクレアがいて、お茶の用意がされていた。
 マキウスに促されて、モニカはマキウスの隣に座り、マキウスの対面に座ったヴィオーラの隣にリュドヴィックが座ったところで、ティカたちは退室した。
 いつもなら部屋の隅に控えているので、これもあらかじめ人払いを頼んでいたのだろう。

「さて」

 二人の足音が遠ざかったところで、ヴィオーラが口を開いたのだった。

「昨晩のことを話してくれますね。マキウス、モニカさん?」

 ヴィオーラとリュドヴィックから問い掛けるような視線を受けて、二人はほぼ同時に頷いたのだった。

「……はい」

 二人は揃って返事をしたが、モニカの膝で組んだ両手は震えていた。

 ここで失敗したら、ヴィオーラとリュドヴィックから嫌われてしまうどころか、せっかく和解した姉弟の関係が悪くなり、リュドヴィックとマキウスの仲も悪くかもしれない。
 そう考えたら、自然と手は震えてしまった。

 すると、隣から伸びて来た白手袋の大きな手が、モニカの震えている両手に触れてきた。
 モニカが振り向くと、そこには安心させるように微笑むマキウスの姿があった。
 マキウスは小さく頷くと、向かいに座るヴィオーラとリュドヴィックを振り向いた。

「では、私から説明をさせて下さい。私が犯した罪とモニカについて……」

 そうしてマキウスは、「モニカ」に対してマキウスが犯した罪、ニコラの誕生、そしてこの世界で目覚めたモニカと。
 これまであったことを、話し出したのだったーー。