「あれは、私がまだ中学生ーー学生だった頃です。たまたま、同じクラスになった男子学生がいたんです。とても優しい人で、マキウス様ほどではありませんが、見目麗しくて、文武に秀でていました。性格も明るくて、学年中の人気者でした。
対して、あの世界での私は、取り立てて良いところはありませんでした。
勉強も運動も普通で、顔はあまり良くなくて。性格も暗くて、教室の隅で本を読んでいるようなタイプでした。
明らかに、私とその男子学生は真逆の存在でした。けれども、その男子学生は、何故かそんな私に気兼ねなく話しかけてきたんです」
その男子学生は話しかけてきただけではなかった。
モニカの代わりに、重い物を持ってくれて、勉強でわからないところがあれば、何でも教えてくれた。
学年でも男女問わず人気のある男子学生だったが、そんな彼が何も取り柄がないモニカにも優しくしてくれたのだった。
「最初こそ、その男子学生を警戒しました。けれども、それが半年も続く頃にはすっかり気を許していました。
だから、その子が優しくしてくれる分、私もその子に優しくしました。誰かに優しくされたら、その人にそれを返す。まだまだ未熟だった私は、そう信じていたんです」
モニカは大きく息を吐き出すと、絶え間なく星が流れていく空を見上げる。
「秋が終わりかけのある日、私の近所に住む友人が自宅にやって来ました。男子学生が私に会いたがっていて、でも御私の自宅がわからないから、その子の自宅で待っていると言って。その頃には、男子学生に対する警戒心は全く無くなっていたので、愚かにも私は何も不審がることもなく、その友人の自宅に行きました」
それが、そもそもの間違いだった。
それ以前に、そのモニカを呼びに来たという友人は、子供の頃はほどほどに仲が良かったが、中学生になってからはほとんど話していない友人だった。
いくら男子学生が仲介を頼んだとはいえ、そんな友人がわざわざモニカの自宅に来て、モニカを呼びに来たことさえ怪しむべきだったのだ。
「その友人の後について、友人の自宅まで行きました。友人は自宅で待っているという男子学生を呼んでくると、自宅に戻りました。
友人の自宅から出て来た男子学生は、私を近くの公園に連れて行きました」
連れて行かれたのは、住宅街の中にある小さな公園だった。
秋暮れの時期だったので辺りは暗く、街灯も少ない公園だったが、近くの民家からの明かりもあって、ほどほどに明るかった。
「男子学生は、その公園のベンチに座ると、隣に座るように言いました。そうして……」
その時のことを思い出して、だんだん息苦しくなってきた。
唇が震えて、心臓が嫌な音を立て始めた。
心なしか身体を抱きしめていた手まで震えているような気がした。
そんなモニカの様子に気づいたマキウスが、そっと背中をさすってくれた。
「辛いなら、無理に話さなくても大丈夫です」
「大丈夫です。マキウス様には知って頂きたいんです。御國のことを」
モニカはなんとか息を吸い込んで、心臓を落ち着かせると、そっと口を開く。
「言われた通りに隣に座ると、男子学生は私をベンチに押し倒して……襲い掛かってきました」
「なっ!?」
それまで、黙ってモニカの話を聞いていたマキウスだったが、今のモニカの言葉に叫びそうになったのか、顔を逸らすと、大きく息を吐き出して、気持ちを抑えているようであった。
そうして、「すみません。続けて下さい」とすぐに謝ってきたのだった。
対して、あの世界での私は、取り立てて良いところはありませんでした。
勉強も運動も普通で、顔はあまり良くなくて。性格も暗くて、教室の隅で本を読んでいるようなタイプでした。
明らかに、私とその男子学生は真逆の存在でした。けれども、その男子学生は、何故かそんな私に気兼ねなく話しかけてきたんです」
その男子学生は話しかけてきただけではなかった。
モニカの代わりに、重い物を持ってくれて、勉強でわからないところがあれば、何でも教えてくれた。
学年でも男女問わず人気のある男子学生だったが、そんな彼が何も取り柄がないモニカにも優しくしてくれたのだった。
「最初こそ、その男子学生を警戒しました。けれども、それが半年も続く頃にはすっかり気を許していました。
だから、その子が優しくしてくれる分、私もその子に優しくしました。誰かに優しくされたら、その人にそれを返す。まだまだ未熟だった私は、そう信じていたんです」
モニカは大きく息を吐き出すと、絶え間なく星が流れていく空を見上げる。
「秋が終わりかけのある日、私の近所に住む友人が自宅にやって来ました。男子学生が私に会いたがっていて、でも御私の自宅がわからないから、その子の自宅で待っていると言って。その頃には、男子学生に対する警戒心は全く無くなっていたので、愚かにも私は何も不審がることもなく、その友人の自宅に行きました」
それが、そもそもの間違いだった。
それ以前に、そのモニカを呼びに来たという友人は、子供の頃はほどほどに仲が良かったが、中学生になってからはほとんど話していない友人だった。
いくら男子学生が仲介を頼んだとはいえ、そんな友人がわざわざモニカの自宅に来て、モニカを呼びに来たことさえ怪しむべきだったのだ。
「その友人の後について、友人の自宅まで行きました。友人は自宅で待っているという男子学生を呼んでくると、自宅に戻りました。
友人の自宅から出て来た男子学生は、私を近くの公園に連れて行きました」
連れて行かれたのは、住宅街の中にある小さな公園だった。
秋暮れの時期だったので辺りは暗く、街灯も少ない公園だったが、近くの民家からの明かりもあって、ほどほどに明るかった。
「男子学生は、その公園のベンチに座ると、隣に座るように言いました。そうして……」
その時のことを思い出して、だんだん息苦しくなってきた。
唇が震えて、心臓が嫌な音を立て始めた。
心なしか身体を抱きしめていた手まで震えているような気がした。
そんなモニカの様子に気づいたマキウスが、そっと背中をさすってくれた。
「辛いなら、無理に話さなくても大丈夫です」
「大丈夫です。マキウス様には知って頂きたいんです。御國のことを」
モニカはなんとか息を吸い込んで、心臓を落ち着かせると、そっと口を開く。
「言われた通りに隣に座ると、男子学生は私をベンチに押し倒して……襲い掛かってきました」
「なっ!?」
それまで、黙ってモニカの話を聞いていたマキウスだったが、今のモニカの言葉に叫びそうになったのか、顔を逸らすと、大きく息を吐き出して、気持ちを抑えているようであった。
そうして、「すみません。続けて下さい」とすぐに謝ってきたのだった。