ドキリとして、モニカはネグリジェの胸元を押さえる。
 そのまま傍らを振り向くと、鼻先が触れ合うかという距離にマキウスの顔があった。
  マキウスの端麗な顔には悪巧みを思いついたというような、したり顔が浮かんでいたのだった。

「あっ……」

 マキウスの端麗な顔に見惚れて、一瞬だけ胸元を押さえる手を緩めた隙に、マキウスはモニカの両脇の下に手を入れてきた。
 そのまま、両脇に指を這わせたのだった。

「ど、どこを触っているんですか……!? 止めて下さい!」

 いわゆる脇の下をくすぐられている状態に、最初こそ、モニカは止めるように懇願したが、ネグリジェの上から指を這わせるマキウスの手が止まることはなかった。
 やがて、笑いながら目尻に涙を溜めると、身を捩って、ソファーの上に倒れたのだった。

「ほう。モニカはここが苦手なんですね」

 マキウスは目を光らせると、猫の様に仰向けになったモニカをくすぐり続けた。
 ソファーから逃げようとするモニカを、自らの身体で押さえつけると、脇の下に指を這わせたのだった。

「や、やめて、ください……! くすぐったいです……!」
「嫌です。それではここはどうでしょうか?」

 すると、マキウスは脇の下に這わせていた指を、今度はモニカの首元に移動させた。
 喉元を中心に指を当てると、首の後ろに向けてまた指を這わせたのだった。

「そこも……ダメです! くすぐったい……くすぐったいです!」

 くすぐられて息継ぎが出来ず、笑い転げながら息も絶え絶えにマキウスに訴えるが、やはりマキウスの指が止まることはなかったのだった。

 しばらくして、マキウスは首元をくすぐっていた指をようやく離してくれた。
 起き上がったモニカが肩で息をしている間も、マキウスはモニカの腰に腕を回して、抱きしめる力を緩めてくれなかったのだった。

「もう、マキウス様ってば!」

 モニカは目尻に涙を溜めたまま、顔を紅潮させて叫ぶが、マキウスはただ笑っていた。

「ははは。最近の疲れが、癒されました」

 普段の大人びた顔とは違い、年相応な笑みを浮かべたマキウスは、今にも抱腹絶倒しそうな様子であった。
 ようやく、笑いが収まったマキウスは、モニカを抱きしめてきたのだった。

「また、お願いしますね?」
「もう……」

 頬を膨らませたモニカの膨れっ面に、マキウスはまた笑ったのだった。