「姉上によると、二、三日もすれば、加工が完了するそうです。
 完了したら、姉上が魔法石を預けた職人がいる工房まで取りに行くそうなので、そうしたら姉上の元に取りに行きます」
「ありがとうございます。マキウス様。何から何まで、お世話になってしまって」

 モニカが礼を述べると、マキウスは首を振ったのだった。

「これくらい、大したことではありません。
 貴女は私の妻。貴女の為なら、何も惜しくありません」

 すると、マキウスは不意に肩を落とすと、顔を顰めた。

「それよりも、私は貴女に謝らなければなりません」
「何ですか? マキウス様が謝ることなんて、何も……」

 モニカが不安に思っていると、マキウスは頭を浅く下げたのだった。

「私が魔法石を渡したことで、貴女を苦しませることになってしまいました。
 それも、気がつくのが遅くなってしまい。……申し訳ありません」

 モニカは項垂れたマキウスの肩を掴んだ。
 すると、マキウスは驚いた様に少しだけ頭を上げたのだった。

「顔を上げて下さい! マキウス様は何も悪くありません。心配をかけさせたくなくて、私も相談しなかったですし。
 それに寝室も別々なので、気づかなかったのも当然で……」

 マキウスが夢の中に入ってきたあの日以降、御國だった頃の夢を見ることはなくなった。
 魔法石の指輪がないからというのもあるが、守護の力を持つというペリドットのネックレスが守ってくれているのかもしれない。

 モニカ自身もこれは自分の問題だと考えて、マキウスに何も相談しなかった。
 けれども、結局、自力では解決出来ず、マキウスの力を借りて解決することになった。

 こんなことになるなら、最初から相談をするべきだった。
 これではアマンテを始めとする使用人とマキウスに、心配をーー迷惑をかけただけだった。

「モニカ、そのことですが……貴女にお願いしたいことがあります」
「な、なんでしょうか? 私に出来ることですか?」
「ええ。出来ます。これは、貴女にしか出来ないことです」
「私にしか出来ないことですか……?」

 一体、マキウスに何を言われるのだろうか。
 モニカは口の中が急速に乾いていくのを感じたのだった。
 マキウスの言葉を待っていると、静かなテノールボイスがバルコニーに響き渡ったのだった。

「今夜から、私と同じ部屋で寝ていただけませんか?」