ようやく、マキウスはペリドットから口を離すと、ペンダントを手に取ったのだった。

「やはり、これも、魔法石の一種ですね」
「えっ?」
「ただ、これは守護の石ですね。持ち主を守る効果を持った」
 
 マキウスによると、魔法石にもいくつか種類があるらしい。
 モニカが持っているような、魔法石に魔力を宿し自由に使えるもの以外にも、元から石自体に攻撃や防御、回復といった魔力が宿っており、特定の用途にしか使えず、また魔力の補充が出来ないといったものだ。
 このペリドットは後者であり、持ち主を守護する効果を持っているが、守護以外には使えず、魔力の補充が出来ないとのことだった。
 
「この種類の魔法石は、魔力の補充が必要ない分、使い切ったらそれで終わりです。後はただの装飾品でしかありません」
「使い捨てってことですか……」
 
 こんなに可愛いネックレスなのに使い捨てなんて勿体ない、とモニカは花の形をしたペンダントトップを優しく撫でたのだった。

「せっかくなので、普段から身につけて下さい。これなら私も今以上に安心できます」
「わかりました。今度からは、指輪と一緒にこのネックレスも持ち歩くようにしますね」

 すると、マキウスはモニカの左手を取ると、魔法石の指輪に触れたのだった。

「起きてから言うつもりでしたが……。魔法石の指輪を、一度預かってもいいですか?」
「それは、構いませんが……?」
「せっかく、守護の力を持った魔法石を入手したのです。今の内に、魔法石の指輪を別の装飾品にしましょう。もっと身につけやすい形に」

 魔法石の指輪を入手した時から、マキウスは魔法石を身に着けやすい形に出来ないか考えていたらしい。
 やはり、ニコラに触れる際に、モニカが指輪を外してしまうことに抵抗を覚えるようで、常に身に着けて欲しいと繰り返し言われていたのだった。
 
「実は、指輪の代わりとなる新しいデザインを考えていましたが、ようやくデザイン画が完成したんです。後は、デザイン画と一緒に魔法石を加工屋に持ち込むだけでした」
「マキウス様って、デザイン画も書けるんですか!? 凄いです!」
「まあ……これは、その……子供の頃に姉上たちに振り回されたお陰で、出来るようになったものなので……」

 それでも、褒められてご満悦の様な顔をしたマキウスに、モニカが指輪を外して渡そうとすると、それを遮ったのだった。

「それは後にしましょう。それよりも、起床にはまだ早い時間帯です。
 私はもう一度寝ますが、貴女も一緒にいかがですか?」
「一緒にって、それって……」

 ガウンを引き寄せて胸元を押さえていると、マキウスは「何もしませんよ」と苦笑したのだった。

「この部屋は元々、夫婦の寝室として用意しました。ですが……やはり、ベッドが大きい分、一人で寝るのは寂しいものです」

 マキウスは身構えているモニカの手を掴むと、ガウンごと手を解いた。
 手早くガウンを脱がせると、適当に畳んでベッド脇のサイドテーブルの上に置いたのだった。