『どうかな、志希ちゃん。君と僕、二人の力を合わせれば、どうにかできるかもしれない。やってみる気はあるかい?』


 そう言って、荒熊さんは差し伸べるように自分の手を差し出した。

 ただ荒熊さんに頼るだけじゃない。自分にもできることがある。そう言ってもらえたことがすごくうれしくて、それに何より力が湧いてきて……。


『はい!』


 だから志希も、自信を持って荒熊さんの手を握り返すことができたのだ。

 そんなことを思い出しながら、志希は仲良く談笑する源内夫婦を見つめ、「フフッ」と笑う。


「荒熊さんが言った通りでしたね。さすが神様です」


「当然です」


 志希が賞賛すると、荒熊さんはフフンと腰に手を当て、胸を張った。

 この世界が構築されて干渉が可能になると、志希と荒熊さんはすぐに源内さんの奥さんに事情を話した。すると奥さんは、『ありがとうございます。あとは任せてください』と笑ってくれた。

 そして、今ここに至った。荒熊さんが予想した通りの展開になったわけだ。


「私、自分の霊力とか、特に気にしていなかったんですが……。あの笑顔を見ることができたのですから、お父さんとお母さんに感謝しないといけませんね。『素敵な贈り物をくれて、ありがとう』と」


 志希は、独り言とも荒熊さんへ言っているとも取れる調子で言葉を紡ぐ。

 荒熊さんはその言葉に何か答えたりすることはなかったが、志希は彼が隣で微笑んでいるのを感じた。