「源内さんのために、自分にできることはないかって、ずっと考えていました。けれど、何も思いつかなくて……。荒熊さんは、神様なのですよね。それなら、せめて源内さんの願いを叶えてあげることはできないのですか?」

 文字通り神頼みのような心持ちで、志希は荒熊さんへ言い募る。
 もちろん志希だって、自分が無茶なことを言っているとわかっている。

 だって、源内さんの奥さんは、もうこの世にいないのだ。思い出の梅の木だって、もうこの世にない。いかに神様とはいえ、これではどうしようもないだろう。
 それでも一縷の望みから、荒熊さんに聞かないわけにはいかなかった。

「さすがに僕も、死者や切られた木を蘇らせたりはできない。現実的に源内さんの願いを叶えることはできないね」

「そう……ですか」

 しかし、現実はやはり甘くなかった。わかっていたこととはいえ、荒熊さんの口からはっきり無理と言われると落ち込んでしまう。

「けどまあ、現実的じゃなくても――夢のようなものでもよければ、方法がないわけじゃない」

 しかし、続けて放たれた荒熊さんの言葉に、俯きかけていた顔をバッと上げる。
 そして、驚きに目を見開いて椅子の上の荒熊さんをガシッと掴んで持ち上げ、ガクガクと前後に揺すり始めた。

「荒熊さん! それはどういうことですか!」

「し、志希ちゃん、落ち着いて! 酔う! 酔うから!」

 すごい剣幕で揺すられた荒熊さんが、尻尾をだらんと垂れさせる。
 志希も自分が突飛な行動に出ていたと気が付き、慌てて荒熊さんを解放した。

「それで荒熊さん、『夢のようなものでよければ』とは、どういうことですか?」

「あ~、ええとね。僕の神様としての力、それに加えて志希ちゃんの並外れた霊力があれば、ちょっとした奇跡を起こせるってことさ」

 そう言って荒熊さんは、詳しく説明をし始める。
 それを聞いた志希は、もう一度目を大きく見開かせた――。