「そうかい? じゃあ、お言葉に甘えて」


「はい。召し上がれ」


 志希からオムライスを受け取った明日香が、荒熊さんと同じくすごい勢いでオムライスを口に運んでいく。米粒一つ残さずにぺろりと平らげた明日香は、最後にオレンジジュースを飲んで一息ついた。


「姐さん……。姐さんは、絶対にいい嫁さんになるよ。あたしが保証する」


 そして、その味に感銘を受けたらしい明日香は、年齢に似合わないいぶし銀な口調と雰囲気で、そう宣うのだった。

 と、その時だ。店の掛け時計が、午後二時を知らせる鐘を鳴らした。


「おっと、いけない。――旦那、姐さん。あたし、今日はこれで帰るよ。この後、友達と約束があるんだ」


 空になった皿やコップをカウンター内の流し台で洗いながら、明日香は志希たちに言う。洗い物を終えた明日香は、「じゃ、またね」と言って帰っていった。


「明日香ちゃん、おもしろい子ですね。それに、しっかりしていて、とってもいい子です」


「でしょ。明日香ちゃんが店の手伝いをしてくれるようになって半年経つけど、ほんと、いつも助かってるよ」


 明日香を見送り、志希は荒熊さんと微笑み合う。

 一日一緒に働いてわかったが、明日香は頼りになる“先輩”だった。これからも、仲良くしていけたらと思う。


「それじゃあ私、もう一回お昼ご飯を作ってきますね」


「うん、いってらっしゃい。今度は、二階でゆっくり食べてきていいよ」


「はい。ありがとうございます」


 荒熊さんに再度送り出され、志希は二階へ上がっていった。